「課題は多い業界だと思います。でもだからこそ誠実さを貫けば信頼が積み重なる」
そう語るのは、株式会社グランクルー代表の加瀬健史氏。住友不動産販売で11年、その後5年の経験を経て2017年に独立。業界の閉鎖性と不誠実さに危機感を抱き、「正直不動産」が流行してしまうほど誠実でない業界を少しでも変えたいという想いで起業しました。
特に注力するのが、多くの不動産会社が敬遠する「借地」案件です。手間がかかり、利益率も低い。それでも25年間、地道に信頼を積み重ねてきた結果、今では同業者からの相談も受ける「プロが頼るプロ」となりました。
早朝3時半起床、ロータリークラブでの社会貢献、そして家族を何より大切にする。一見矛盾するようなバランスを実現する加瀬氏の信頼哲学に迫ります。

| 社名 | 株式会社グランクルー |
|---|---|
| 代表取締役 | 加瀬 健史(かせ たけし) |
| 経歴 | 住友不動産販売株式会社 11年勤務 株式会社不動産工房 5年勤務 2017年10月 不動産工房コンサルティングオフィス 株式会社グランクルー 設立 代表取締役就任 |
| 住所 | 〒156-0055 東京都世田谷区船橋1丁目13-20 最寄り駅:小田急線「千歳船橋」駅徒歩2分 |
| ウェブサイト | https://fkoubou.net/ |
「正直不動産」が流行る業界への危機感

代表取締役の加瀬健史(かせたけし)さん
すみかうる編集部まず、御社の経営理念について教えてください。
加瀬さん:「不動産に関するあらゆる問題解決を通じて、人間尊重の実践と、地域社会の発展に貢献する」っていうのが、会社の理念なんですね。
とにかく不動産に関するあらゆる問題を解決する。それによってお客様を大事にする、その利益を大切にする。あとは社員も含めて関係者全員が、物心ともに豊かになってほしい。私自身は、ロータリークラブの活動だったりとか、商店街とか、子どもの学校のおやじの会とか、そういった活動を通じて、地域社会の発展に貢献したい。
大儲けして、夜の街でシャンパンをポンとやりたいわけじゃないんですよね。不動産会社というと、そちらに見られがちなので(笑)



実際に不動産業界で働かれていて、不誠実さを感じる場面はありますか?
加瀬さん:いっぱいありますよ。誰も信じられない業界だなと思う時もあります。そもそも同業者同士で、社会的マナーがなってない人が多い。
具体的には電話対応ですよね。折り返し電話くださいって伝えても、基本的にはかかってこない。「電話があったことだけお伝えください」って旨の電話が3回も届いてたら、さすがに折り返ししなきゃまずいなと普通は思うじゃないですか?この業界、100回やっても折り返しこないですからね(笑)もうそういう不誠実な業界なんですよ。
同業者を大事にしないって、不誠実さの最たるものでしょう。これって、すごいお客さんにも伝わるんですよね。



なぜそうなってしまうんでしょうか?
加瀬さん:業界の構造ですよね。両手取引にしたいから、他社は敵なんですよ。他者をよくも悪くも介入させたくない、自社内で完結させたいんです。
住友不動産販売の時は、30件ぐらい売り物件の依頼をいただいているので、その30件に対して、いろんな不動産会社から問い合わせとか資料請求が来るんですね。確かに鬱陶しいんですよ。30物件の担当者として5件連絡がきたら、一日だけで150件対応するわけじゃないですか。
私も振り返れば、邪険ではなかったとは言い切れない。ただ、ある時から「これはいけないな」と、仲間を作る良い機会だと思って、感じの良い対応を心がけたんですよ。そのおかげで住友不動産販売の成城センター時代には良い仲間がたくさんできて、複数の大手不動産会社の方々ともみんな仲良くなって、いまだに交流があるんです。
「借地ができたら独壇場」、師匠の教えから始まった専門性


穏やかな雰囲気が漂う街です。
なぜ借地に取り組むようになったのか



借地に取り組むようになった経緯を教えてください。
加瀬さん:最初に配属された営業所でお世話になった、沖田所長がきっかけですね。当時配属された営業所は、それこそ豪徳寺とか常徳院とか、周りにお寺が多かったんです。お寺って借地をいっぱい持っているので、所長から「このエリアで借地の取引ができるようになったら、お前の独壇場になるから、借地の取引を教えてやる、取り組め」といわれたのがきっかけです。



なぜ他社は借地を避けるんでしょうか?
加瀬さん:複雑だし、手間がかかるし。権利関係も複雑で、法律の知識が求められることはもちろん、慣習慣行もすごく多い。それ相応の知識が必要で、かつ交渉ごとに強いことが求められます。
また、折衝する相手も増えるんですよね。通常の不動産売買だったら、売り主さんとお話をして売り出せばいいんですけど、売り出すと決まっても、地主さんとの譲渡承諾条件の調整が必要。地主さんの中には、弁護士や不動産会社に窓口を頼んでいる方も多く、枝葉のごとく、関係者が増えていってしまうんです。実際、私が以前担当した大田区の借地は、契約してから決済するまで1年3カ月かかりました。



労力に合わないということですね。
加瀬さん:そうです。だから敬遠されちゃう。借地だと売買価格が安くなるので、概ね所有権の半額です。それでいて手間暇かかって、時間もかかる。
通常だったら、売り出してから4カ月から半年で引き渡しまで完了するスケジューリングなんですが、長いと1年はかかりますね。平準化できないのが一番の悩みで、話が一気に集まっちゃって、案件が増えすぎて動けなくなることもしばしばあります。
地元業者も手を出さなかった困難案件





地元業者も嫌がった地主を対応したことがあると伺いました。
加瀬さん:ある都内のお寺なんですけど、住職がすごく癖があるらしくて、地元の不動産業者はみんなやってくれないということで相談があって。どこも取り扱ってくれないから、そこの借地は売れない。癖のある地主さん、全然苦じゃないんですが、その区は遠いなと思ったんですよ。でも困っていらっしゃったんで、やりましょうということで。



どんな住職だったんですか?
加瀬さん:1回別の会社が買主として決まってたんですけど、決済前に地主さんが怒っちゃって、「あいつは絶対に許さん!」って。でも、私、その地主さんと何度もやり取りしていくうちに、怖い人じゃないっていうのがわかったんですよ。半歩近づいて、「いやいや、住職そうは言っても」っていえば、「そこまで言うんでしょうがないな」とか。そういうタイプの人だったんです。



距離感の取り方が重要なんですね。
加瀬さん:親戚のおじさんと話すぐらいの距離感で話せって。失礼がないように敬語だし、敵対するわけじゃなくて、「おじさん、こうした方がいいよ」っていうのを丁寧に話す。その距離感の取り方っていうのは、沖田所長の教えで、目で見て覚えた部分が大きいです。



その案件では、どう解決したんですか?
加瀬さん:なるべく、借地人さんと一緒に住職のところに行くようにしたんですよ。40代の姉妹だったんですが、「そういえば、子どものころ、うちの境内でよく遊んでたよね」みたいな話になって、住職もだんだんとソフトになってきた。
話を聞いていく中でわかったんですが、その借地人のお父さんが数年前に更新料を払っていなかったことに住職がすごく怒っていたんですね。そこで「更新料の未払いをチャラにしてくれってわけじゃなくて、売却して、当時払ってなかった更新料も払って、今回、譲渡承諾料も払う、きちんとした人を連れてきてますから」みたいな感じで、最初のボタンの掛け違いを丁寧にかけ直してあげたら、あれよあれよと話がスムーズに進みました。
お寺の借地と一般借地の違い



お寺の借地案件と一般の借地案件の違いはありますか?
加瀬さん:基本的にお寺の方がスムーズです。お寺の方が、地主としてたくさん土地を持っていたりするので。もともと檀家のために住宅を供給するという考え方でやっていたので、極端なこと言わないんですよ。
地代を急に高くするとか、更新料をすごい高くするとか、承諾料を高くするとかない。あくまでも公益事業の傍らでやっている大家業なので、そんな極端なことを言わなくて、きちんと段取りを組めばできる。
ただ、今まで借地を売ったことがないというお寺さんは結構大変です。最初の一例目になるので慎重になります。ノウハウがないので。その点に関して理解しております。
お寺は、相手によって条件を変えられないというか、変えたくないんです。この檀家だから高くする、この人だから安くするというのは、不公平が生まれてしまうので。そこは言わない。
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借地市場の将来性



借地市場の今後についてはどう見ていますか?
加瀬さん:地価が上がっているので、所有権価格の半額で買える借地の価値は今後も高まるのではないかと考えています。
また、地主さんによっては相続共有を認めないという借地が多いのですが、少子化の影響で子どもが1人しかいない人が増えていることもあって、需要が高まっている気がします。
子どもが5人も6人もいると借地は大変なんですよ。地主さんも6人の相続人になるのは、管理が行き届かないので勘弁してくれって言いますしね。



若い世代の借地に対する抵抗感はどうですか?
加瀬さん:すごい抵抗感がある人と全くない人に分かれますが、抵抗感がない人は借地のメリットがわかっている勉強熱心な人が多いなと感じます。
でも、そういう人たちばっかりじゃないんですよね。借地を売るのってすごいテクニックというか、説得力が必要なので。「これだけ権利が強いので、法律で守られていますよ」とか、旧法の借地権なんかについても説明したうえで、全て納得してもらって買ってもらわないといけない。借地が売れる営業マンが一番、不動産の営業としては能力が高いと思います。そして、借地は今後も“知る人ぞ知る価値ある不動産”として注目されると考えています。


信頼を可視化する工夫、パーソナル動画と親子3代リピート


和やかな雰囲気の中で撮影が進みました。
相談初期に送るパーソナル動画



パーソナル動画について教えてください。
加瀬さん:査定依頼の時に対面でお会いできなかった人に対して、査定書の解説動画を作って送っているんです。その人しか見れないように限定公開にして、専用リンクを送っています。動画は5分とか10分ぐらいで、査定書を説明するだけです。



なぜ動画にしたんですか?
加瀬さん:一番の狙いは、何回見たかが分かるからです。こう言うと気持ち悪いから、お客さんには言わないようにしてるんですけど(笑)。でも、3回見てるって分かると、関心が高いって思いますよね。
会うまで行った人はもう「お待ちしてました」みたいな。もう初対面じゃないんですよね、画面で見てるから。「あ、本物だ」みたいな。お客さんからしたら、リアルではないにしろ、再生していれば知ってるので、初めて会った感じがしない。



動画制作で工夫している点は?
加瀬さん:編集は妻がやってくれているので、妻の機嫌を取ることですね(笑)。本当に簡単な作業だけですよ。1本ぐらいの動画があったら、20分ぐらいで終わります。ほぼノーカットで字幕を入れるだけです。定点カメラを置いて撮影しています。
親子3代にわたるリピート顧客、20年越しの信頼





親子3代にわたってリピートしてくださったお客様について教えてください。
加瀬さん:20年近く前、ある夫婦の旦那さんから、奥さんのお父さん(義父)の借地を売ってほしいという相談がありました。
お寺が地主なんですけど、弁護士に窓口を頼んでいて、その弁護士がすごく嫌な人だったんです。アポを設定しているのに事務所にいなかったり、譲渡承諾も全然合意しない。何度も何度も行って話して、最終的には物件1棟あたり〇〇〇万円を弁護士に支払うことで、ようやくまとまったんです。
当時、私は住友の営業マンだったし、買い手が住友の子会社だったんで、すごい板挟みになって。売り主と会社と、双方から「早く決済しろ」って(苦笑)
そうこうしてるうちにご本人(義父)が亡くなっちゃっただけでなく、前妻や前妻の子供たちも出てきて、話しをつけなきゃいけない相続人がどんどん増えていってしまったんです。



それが親子3代の最初のきっかけなんですね。
加瀬さん:そのとき、苦労していたのを見ていたので、ご本人の実家を売るときも相談頂いて。また、5~6年ほど前にはご夫婦の息子さんからも相談を受けました。
25年やると3世代取引が出てくるなって。他にも何回か3世代の方がいらっしゃるんですけど、覚えていてもらえるのはすごく嬉しいなと思いますね。
ロータリークラブと朝3時半起床、社会貢献と仕事の相乗効果





ロータリークラブの活動と本業のバランスはどう取られているんですか?。
加瀬さん:いろんな先輩を見て、ロータリークラブの活動を一生懸命やってる人のほうが、事業が発展しているんですよ。私自身、ロータリークラブの活動は週一回程度ですが、本業も含めてやらなきゃいけないことは、朝早く起きて終わらせるようにしています。



朝は何時に起きるんですか?
加瀬さん:朝3時半から4時です。夜は8時半には寝るので。
一時は、2時半とかに起きてたんですけど、妻に「2時半は夜、3時なら朝」って言われて。この30分の違いは何なんだろうって思いますけど(笑)。
でも、朝のほうが頭が回るし、すっきりしますよね。それに、朝からメールを返したりすると「いつもこんなに朝早いんですか?」みたいに勝手に尊敬してくれるんですよ。寝るのが早いだけなんですけどね。





ロータリークラブの活動が仕事にもたらすメリットは?
加瀬さん:やっぱりロータリーの活動って、すごくいいことしてるんですね。1人じゃ絶対実現できないことを、みんなの力とお金を使って実現する。本当にいい活動してるなと思って。
若い頃は、あれが欲しい、これが欲しい、夜の街でシャンパンをポンと開けたりもしてみましたけど、そうじゃないよな、と。正当な仕事をして、得た利益を社会に還元するにしたって、ロータリークラブの仕組みを使ったほうが、より大きく還元できますよね。
今回は私が委員長になって、若者20人を連れて、能登の復興の研修旅行に行くんですよ。若者たちに能登の現状を知ってもらい、どんな貢献ができるかみたいな研修プログラムを作って。250万円ぐらいかかるんですけど、費用はロータリークラブで負担、参加者無料なんです。飛行機代から宿泊費まで全部。
それから、川崎市消防から救急車を払い下げで買って、バヌアツ共和国に寄贈したこともあります。ポリオ根絶に向けてのワクチン普及が有名かもしれませんが、本当に色んな事をしているんですよね。
同業者からの相談も受ける「プロが頼るプロ」


大手不動産の営業マンからキャリア相談



同業者からの相談も受けるそうですね。
加瀬さん:借地のことであれば、同業者からの相談も受けます。それだけ不動産業をやられている方でも、借地権っていうのは難しいんですよね。
あと、私がよく相談を受けるのは、業界最大手の不動産会社で現役で働いている営業マンですね。この先のキャリアをどうしたらいいかとか。あとは一回大手から転職したけど、思ったような転職じゃなかったという人も。独立支援も、相談に乗ってるんです。



プロが頼るプロになるために必要なことは何でしょうか?
加瀬さん:インプットとアウトプットのバランスですね。インプットだけでもダメだし。ノウハウをどんどん人に提供しろというのは、沖田所長からの教えですね。
当時の私は信じられなくて、「いやいや、出し惜しみしますよね」みたいな。でも「どんどんみんなにノウハウを提供したほうがもっといい情報が入ってくる」と。
自分だけで情報を抱え込んでしまう状態がダメなんですよね。目先の利益はそれで上がるかもしれないけど、長期的に見たら首を絞めるよってことです。長期的に見れば、もう25年この業界にいるので、何年もたって自分の元にプラスになって返ってきたケースをたくさん知っています。
一緒に「誠実さ」を大切にできる仲間を求めて


こうした信頼の蓄積があるからこそ、グランクルーでは同じ価値観を共有できる仲間を募集しています。以下は応募を検討される方向けのQ&Aです。
――いま一緒に働く人も募集しているとか?
加瀬さん:はい。誠実さを何より大切にできる方を歓迎しています。宅建があれば歓迎ですが、まずは人柄重視です。
――未経験でも大丈夫ですか?
加瀬さん:大丈夫です。借地は難しいですが、OJTと先輩同行で育てます。意欲が一番大切です。
――将来独立したい場合は支援してもらえますか?
加瀬さん:可能です。独立希望の方にはノウハウ共有や実務支援をしています。
――働き方や待遇はどんな感じですか?
加瀬さん:案件によって様々です。ただ、常に社員・スタッフに「当社は体調と家族最優先」といって徹底するようにしています。詳細は面談でご相談ください。
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