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「離婚後も引き続き家族が住んでいた家に住み続けたい」と考える妻は多くいます。お子さんがいらっしゃれば、なおさらそう希望される方は多いものです。
しかし、夫名義の住宅ローンが残っている場合には、以下のような問題点が生じます。
・住宅ローン名義は簡単に変更できない
・住宅ローンを完済するのも容易ではない
・離婚後、元夫婦間のトラブルにも発展しかねない
離婚後も夫名義の住宅ローンが残る家に妻子が住む方法はいくつかありますが、そのときのデメリットや注意点についてもしっかり認識しておきましょう。
本記事では、現在夫名義の家に妻子が住むための5つの方法とそのメリット・デメリットを解説します。
まず1つ目は、養育費代わりに元夫に住宅ローンの支払いを継続してもらうという方法です。
離婚する夫婦に子がいれば、離婚前には養育費の取り決めがなされるケースが多いものです。養育費の支払い方は夫婦で決めることができるため、金銭でもらっても、住宅ローンの支払いで相殺しても問題はありません。
現に、元夫が住宅ローンの支払いを続けるというケースは、離婚する子をもつ夫婦に多く見られます。
離婚後も、養育費をもらう代わりに元夫名義の家に妻子が住み続けることが可能です。しかし、そこには次のようなデメリットや注意点があります。
このケースにおける最大のリスクは、元夫による住宅ローン返済が滞ることです。
住宅ローンの返済が3〜6カ月ほど滞れば、住宅ローンを貸している金融機関は“競売”に向けた手続きを開始してしまいます。競売とは、債務者による住宅ローンの返済が不能になったときに、金融機関が債務を回収するためにとる最後の手段。主導するのは裁判所です。妻子が住んでいる場合にも競売手続きが止まることはなく、最終的に妻子は強制退去を迫られます。
養育費を金銭でもらっている場合には、催促したり、裁判所に申し立てたりすることで滞った養育費を回収することも可能です。しかし、養育費をもらう代わりに住宅ローンを負担してもらっている状況では、催促している間にも競売手続きが開始してしまうリスクがあるのです。ひとたび競売手続きが始まってしまえば、競売を免れる方法は「任意売却」しかありません。
元夫に住宅ローンを負担してもらうとなると、“母子手当”とも呼ばれる「児童扶養手当」が受給できなくなる可能性があります。
児童扶養手当とは、父母の離婚などで、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭(ひとり親)の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される手当です。(国制度)
出典:東京都福祉保健局
一人親の援助のために支給される児童扶養手当には、所得制限が設けられています。夫に住宅ローンを負担してもらっている状況では、この制限を超えてしまう可能性があります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
続いては、離婚後に妻が夫から家を借りるという方法です。
離婚後は、夫も自身の生活を送らなければならない以上、引き続き住宅ローンを負担するのは大きな負担となります。賃貸借契約を締結すれば、夫側の負担は大きく減ります。
元夫婦間で賃貸借契約を締結するメリットは、住宅ローンの返済が滞るリスクを下げられることでしょう。金銭的にもそうですが、夫の返済が滞ってしまう理由には、徐々に「理不尽さ」や「不公平さ」を感じることも挙げられます。
離婚時には納得して住宅ローンを支払うと約束した夫も、時間の経過とともに「自分の負担が大きすぎる」「なんで自分が住んでいない家の支払いでこんなに苦しまなければならないんだ」との考えにいたり、故意に返済を止めてしまうケースもあるのです。賃貸借契約を締結すれば、金銭的に、精神的にも、元夫による滞納リスクを下げられると考えられます。
賃貸借契約を締結し、妻が費用を負担すれば、元夫による滞納リスクはたしかに下げられます。しかし「住宅ローンが残っている家を賃貸する」ことを金融機関が認めてくれないことがあるので注意が必要です。
そもそも「住宅ローン」は、自己居住のためのマイホーム用ローン。原則的に、住宅ローンが残っている家を賃貸するとすれば、投資用ローンへの切り替えが必要になります。しかし、投資用ローンは住宅ローンと比較して金利面などの条件が悪いため、元夫が借り換えに同意しないことも考えられます。
「売りたい夫」「住み続けたい妻」この両者の希望を満たせるのが、“リースバック”という方法です。
リースバックとは、売却後のリース(賃貸)。つまり、夫は家を売却し、妻は買主になった人と賃貸借契約を締結して家に住み続けるということです。
リースバックなら、夫は家を売却して住宅ローンを完済できるので、経済的な負担はなくなります。
妻が賃貸借契約を締結するのは、第三者の買主。基本的にリースバックの買主になるのは不動産業者や投資家なので、買主によっては住宅ローン返済が滞るリスクが皆無とはいえませんが、その点は一般的な賃貸借契約と変わりません。
リースバックで問題となるのは、買主兼貸主になってくれる人や機関が見つけられるかどうかです。
リースバック物件の買主になるということは、不動産を購入し、貸すことで利益があると判断された場合のみ。つまり、妻が希望する賃料では買い手がつかない可能性も考えられるわけです。
さらに、売却時には住宅ローンを完済しなければ、夫は家を手放すことはできません。住宅ローン残債と売却金額によっては、任意売却と組み合わせてリースバックする必要があります。
「住宅ローン残債>売却金額」という状況で家を売る方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
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住宅ローンの名義を夫から妻に変更したうえで、妻が住み続けるというのも選択肢の1つです。
夫から妻に名義変更すれば、上記のような不安やデメリットはすべて解消されます。加えて、夫はローン返済の義務から解放されるとともに、元夫婦の関係性も断ちやすくなります。
妻、夫ともにメリットが大きい「名義変更」ですが、そもそも妻に名義を移せるかは大きな問題だといえます。
名義を妻に変更するということは、妻が債務者となってローンを返済していくということ。それだけの収入と信用がなければ、ローンの名義変更はできません。
妻への「名義変更」ができなくても、妻が他の金融機関の住宅ローンを組むことはできる可能性があります。
夫から妻に名義変更できない理由の1つとして、そもそも契約で名義変更が認められていないケースも見られます。名義変更できない場合にも、夫が住宅ローンを完済したうえで妻が別途、住宅ローンを組むことができれば、名義変更と同様のメリットを享受できます。
また、妻の収入や信用面から名義変更ができないケースでも、ローンの借り換えによって金利が下がったり、返済期間を伸ばしたりすることで借り入れが可能になることもあります。
この方法でも問題になるのは、やはり妻が住宅ローンを組めるかどうかです。借り換えや新規借り入れにおいても、債務者になる人の収入や信用は必ず審査されます。
住宅ローン残債が多く、妻の収入が少ない、あるいは正規雇用でない場合はとくに、審査に通らない可能性があることも認識しておかなければなりません。
住宅ローンが残る夫名義の家に、離婚後、妻が住み続ける5つの方法を解説しました。それぞれの方法に向いているケースは次の通りです。
いずれの方法にもメリット・デメリット・注意点があります。不安やリスクが解消されない場合には、離婚とともに家を売却することも検討してみましょう。
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大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。
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