不動産の住み替えとは?方法や費用、安く抑えるポイントを解説!
転勤や転職、子どもの成長などが理由で住み替えをすることになったとき、住んでいる不動産の売却と、新居の購入という2つの作業が必要となります。
住み替えをするときは、ご自身の状況や希望に合った方法を考えるだけでなく、売却と購入のそれぞれでかかる費用も押さえることが大切です。
本記事では、不動産を住み替える方法や不動産売却と購入時にかかる諸費用の内訳などを解説します。

住み替えとは?検討するタイミングや費用などの基礎知識

不動産業界における住み替えは、不動産の売却または購入をともなう住居の変更を指すのが一般的です。たとえば、以下のようなケースです。
- 分譲マンションを売却して注文住宅を建てる
- 分譲戸建て住宅を売却して賃貸住宅に引っ越す
- 分譲戸建て住宅を売却して分譲マンションを購入する など
一方、賃貸住宅から賃貸住宅へ引っ越すなど、不動産の売買取引をともなわない住居の変更は、厳密には住み替えとは呼びません。ここでは住み替えをする主な理由や費用、期間を解説します。
住み替えをする主な理由
住み替えの理由は世帯の種類やライフステージによって大きく異なります。国土交通省の調査によると、世帯ごとの主な住み替え理由は以下のとおりです。
世帯の種類 | 持ち家に住み替える主な理由 |
---|---|
(64歳以下) | 単独世帯・自宅を所有するため:18.1% ・世帯からの独立:7.8% ※結婚、離婚、単身赴任などを含む ・住宅の質を向上させるため:6.3% |
(65歳以上) | 単独世帯・高齢期の住みやすさ:7.5% ・世帯員の減少:6.9% ※子どもの独立や同居人の死別・離別等 ・住宅の質を向上させるため:6.9% |
(長子17歳以下) | 親と子どもから成る世帯・自宅を所有するため:23.5% ・子どもの誕生・成長・進学:22.2% ・世帯からの独立:8.4% ※結婚、離婚、単身赴任などを含む |
65歳以上の夫婦世帯 | ・高齢期の住みやすさ:8.4% ・転勤や退職:7.6% ※定年などを含む ・家の相続:7.2% |
- 出典:国土交通省「令和5年住生活総合調査の調査結果」
64歳以下の単身世帯や子育て世帯では、マイホームを所有したいと考えて賃貸住宅や実家から住み替えをするケースがもっとも多いといえます。
子育て世帯では、子どもの誕生や進学などのタイミングで住み替えをするケースも多いようです。子どもの人数や年齢に合った広さと間取りがある住宅や、通学に便利なエリアの住宅などに住み替えをする子育て世帯も多いと考えられます。
一方で、高齢世帯では「高齢期の住みやすさ」を実現するために住み替えをする人がもっとも多い結果となりました。身体が衰えたあとも生活がしやすいよう、バリアフリー設計の住宅、病院や商業施設が近い住宅などに住み替える高齢者は数多くいます。
住み替えにかかる期間
住み替えをするときは、自宅の売却と新居の取得、あるいはその両方を行う必要があるため、一定の期間がかかります。住み替えにかかる期間の目安は以下のとおりです。
- 注文住宅を新築する場合:6か月〜1年
- 分譲マンションや分譲戸建て住宅、中古物件への住み替え:3~6か月
分譲マンションや中古物件などすでに建てられている住宅に住み替える場合、早いケースでは3か月程度で完了します。
一方、注文住宅を新築する場合は、土地探しや建物の設計をしたあとに建築が始まるため、半年〜1年ほどかかるのが一般的です。
住み替えにかかる主な費用
住み替えをする際は、新居の取得費用の他にも税金や手数料などの諸費用がかかります。売却と購入のそれぞれで発生する諸費用の目安と内訳は以下のとおりです。
諸費用の目安 | 内訳 | |
---|---|---|
売却 | 売却価格の 5〜7% | ・仲介手数料 ・登録免許税(抵当権抹消登記) ・司法書士報酬 ・印紙税(不動産売買契約書) ・引っ越し費用 ・譲渡所得税(利益が出た場合) など |
購入 | 購入価格の 5〜10% | ・登録免許税 (所有権移転登記・所有権保存登記・抵当権設定登記) ・司法書士報酬 ・印紙税(不動産売買契約書・金銭消費貸借契約書) ・住宅ローンの融資事務手数料、保証料 ・損害保険料(火災保険・地震保険) ・仲介手数料(中古物件などの場合) など |
たとえば、自宅を4,000万円で売却し、新居を5,000万円で購入する場合、諸費用の目安は以下のとおりです。
- 売却:200万〜280万円
- 購入:250万〜500万円
- 合計:450万〜780万円
諸費用は、新居の購入費用とは別に現金で支払うのが一般的です。数百万円あるいは1,000万円以上になることもあるため、資金計画を立てる際は諸費用も考慮することが大切です。
住み替え方法の種類と特徴
住み替えの方法には「売り先行」「買い先行「同時進行」があります。それぞれのメリットやデメリットをもとに、ご自身の状況に合った住み替えの方法を考えることが重要です。
ここでは、売り先行と買い先行、同時進行の特徴やメリット、デメリットを解説します。
売り先行
「売り先行」では、現在住んでいる住宅を先に売却したあとに新居を購入します。主なメリットとデメリットは、以下のとおりです。
▽売り先行のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・新居購入の資金計画が立てやすい ・売却するための時間を確保しやすい | ・仮住まいが必要になる場合がある ・引っ越し費用が2回分かかる |
売り先行のメリット
売り先行であれば、先に家を売って売却代金を得られるため、新居を購入する予算を立てやすいといえます。住宅ローンを返済中であっても、残債より高値で家を売却できれば、差額を新居の購入資金に充てることも可能です。
また、家を売り急ぐ必要がないため、じっくりと買主を探すことができ、納得できる条件で売却しやすいのも売り先行の主なメリットといえます。
住んでいる家を時間をかけて売却しやすく、購入予算を決めて新居探しを始められるため、住み替えをする人の多くは、売り先行を選びます。
売り先行のデメリット
売り先行では、旧居を売却してから新居が見つかるまでの仮住まいでの生活になるケースが多く、家賃や敷金、礼金などがかかります。
希望に合った新居はなかなか見つからず、仮住まいの入居期間が長くなればなるほど、家賃の負担が重なっていくでしょう。また、新居で暮らし始める前に、旧居から仮住まいに引っ越しをする分、引っ越し費用も余分にかかります。
買い先行
買い先行は、新居を先に購入したあとに住んでいる家を売却する方法であり、以下のようなメリット・デメリットがあります。
▽買い先行のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・新居探しの時間を設けやすい ・仮住まいの必要がない | ・一時的に二重ローンとなる可能性がある ・旧居を焦って売却しやすい |
買い先行のメリット
買い先行であれば、住み慣れた家に住み続けながら、自分自身や家族の希望に合う新居をじっくりと時間をかけて探すことができます。
急いで新居に住む必要性がない場合は、エリアや間取り、広さなどの条件が、希望に合致する物件が売りに出されるまで待つことも可能でしょう。
また、仮住まいでの生活が不要であるため、家賃や敷金、礼金などの支払いはなく、引っ越し費用も基本的には1回分で済みます。
買い先行のデメリット
買い先行を選ぶと、住んでいた家を売却するまで二重にローンを抱えることになるかもしれません。旧居が予定通りに売却できないと、長期にわたって二重ローンを抱えるリスクがあります。
また、新居に住むためのコストと旧居の維持コストが重なることで焦りを感じてしまい、旧居を安値で売却してしまうかもしれません。
同時進行の特徴
同時進行は、住まいの売却と新居の購入を同時に進める方法です。
売却と購入の決済を原則として同じ日に設定し、必要に応じて引っ越しの猶予期間を数日設けて住み替えをします。同時進行の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
▽同時進行のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・仮住まいが不要 ・二重ローンを避けられる | ・売却と購入のタイミング調整が難しい ・新居選びや旧居の売却を急ぎすぎて失敗する可能性が高くなる |
同時進行のメリット
同時進行は仮住まいが不要であり、引っ越しも1回で済ませられるため、家賃や礼金、引っ越し費用などが余分にかかることはありません。
また、旧居の住宅ローンを完済してから新居のローンを組めるため、ダブルローンとなる事態を回避できます。
同時進行のデメリット
同時進行は売却と購入のタイミングを合わせる必要があるため、スケジュールが調整できず実現が困難な可能性があります。また、焦って契約をしてしまい「生活背景に合わない新居を選んでしまった」「旧居を安値で売ってしまった」といった失敗が生じるリスクもあります。
このように、売り先行、買い先行、同時進行には、一長一短があります。以下の記事も参考に、住み替えの理由や生活背景に合った方法を検討すると良いでしょう。

住み替えの売却と購入の流れ
続いて、住み替えをする際の売却と購入の手順をみていきましょう。
現在の住まいを売却するときの流れ
現在の住まいを売却する手順は以下のとおりです。
- 居住中の不動産を査定してもらう
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 売却活動をして買い手を見つける
- 買主と売買契約を締結する
- 買主に物件を引き渡す
まず不動産会社に査定を依頼し、家の価格相場を調べましょう。
査定方法には、周辺の取引事例や物件の情報などをもとに価格を算出する「簡易査定」と、担当者が現地に足を運ぶ「訪問査定」があります。
次に、査定結果をもとに不動産会社を選び、媒介契約を結んで買主探しを始めましょう。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、有効期限や他業者との同時契約の可否などが異なります。

媒介契約を結んだあとは売却活動が始まり、物件情報が不動産ポータルサイトや広告などに掲載されます。内覧希望があった際にいつでも対応できるように、室内の清掃と整理整頓を心がけ、清潔な状態に保つことが重要です。
買主が見つかったら、価格や引渡し日などを話し合って条件を決め、売買契約を締結します。
その後、残金の決済と引渡し時に売却代金のすべてを受け取り、買主に鍵や物件に関する書類などを渡して取引は完了となります。
新しい住まいを購入するときの流れ
新しい住まいを購入する手順は以下のとおりです。
- 資金計画を立てる
- 住み替え先の物件を探す
- 住宅ローンの事前審査を受ける
- 売買契約を結ぶ・住宅ローンの本審査に申し込む
- 住宅ローンの契約を結ぶ
- 決済・引渡し
新しい家を購入する場合は、まず資金計画を立てることが重要です。住宅ローンの借入額や頭金の額を決め、税金や引っ越し費用なども含めた予算を明確にします。
次に、希望する立地や間取りなどをもとに物件を探しましょう。物件の目星が付いたら、金融機関で住宅ローンの事前審査を受けます。
事前審査に通過したあとは、売主と価格や引渡し日などを交渉し、双方が条件に合意したら売買契約を締結しましょう。
また、住宅ローンの本審査を申し込み、審査が承認されたあとに金銭消費貸借契約を結びます。
最後に、物件の引渡し・決済日に購入代金をすべて支払って売主から鍵を受け取り、法務局で不動産登記を行うと手続きは終了です。
旧居を売却する際に必要な費用
不動産を住み替える場合、売却時に必要となる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。必要になる費用、売却後に必要になる費用、場合によっては必要になる費用の3つに分けて紹介していきます。
売却時の主な諸費用
不動産の売却時に支払う諸費用は、売却価格の5〜7%といわれています。
金額の目安・計算方法 | |
---|---|
仲介手数料 | 売却価格が400万円超の場合は 「(売却価格×3%+6万円)×消費税」が上限 |
登録免許税 | 抵当権抹消登記(売却時に住宅ローンを完済した場合) 不動産1つにつき1,000円(土地と建物で2,000円) |
司法書士報酬 | 1万〜3万円程度 |
印紙税 | 5,000〜30,000円が一般的(売却価格に応じて決まる) ※契約金額によって異なる ※2027年(令和9年)3月31日まで軽減税率が適用される |
引っ越し費用 | 〜10万円(遠距離の場合は20万円以上) |
一括繰上返済の手数料 | 住宅ローンの5,000〜50,000円程度 ※0円の金融機関もある |
仲介手数料は、不動産の売却を依頼する不動産会社に支払う手数料です。法律で定められた上限を上回らない範囲であれば、不動産会社は仲介手数料の金額を自由に設定できます。
住宅ローンの残債がある場合は、基本的に売却代金と自己資金で完済する必要があります。
住宅ローンを完済した場合は、抵当権(金融機関が物件を担保に取る権利)を抹消するための登記が必要です。登記手続きの際は、登録免許税がかかります。
また抵当権抹消登記は、自分自身でもできますが不動産や法律の専門知識が必要になるため、報酬を支払って司法書士に依頼するのが一般的です。

売却の翌年にかかる税金
不動産を売却して得られた利益(譲渡所得)は「譲渡所得税」の課税対象です。
譲渡所得税は、譲渡所得にかかる所得税と住民税です。また、2037年(令和19年)までは、復興特別所得税もかかります。
譲渡所得は、次の計算式を用いて算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却価格)- 取得費 – 譲渡費用(売却時の諸費用)
上記の計算式で求められた譲渡所得から、特別控除額を差し引いたあとの金額(課税譲渡所得金額)に税率をかけて譲渡所得税を計算します。
税率は、以下のとおり売却した年の1月1日時点における所有期間に応じて決まります。
(所得税・住民税・復興特別所得税)
費用の計算方法
所有期間5年以下:譲渡所得×39.63%
所有期間5年超:譲渡所得×20.315%
代表的な特別控除額には、マイホームを売却したときに要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円が控除される「3,000万の特別控除の特例」があります。
特別控除額を差し引いた結果、譲渡所得の金額が0円未満になるのであれば、譲渡所得税はかかりません。ただし特別控除を適用するためには確定申告が必要です。

場合によってはかかる費用
場合によって必要となる費用は以下のようなものがあります。
1.住宅ローンの繰り上げ返済手数料
金融機関によっては住宅ローンを繰上返済する際に5,000〜5万円程度の手数料がかかります。インターネットで申し込みをすると0円になる場合もあります。
2. リフォーム費用
リフォームをすると家の資産価値が上がり、結果的に高く不動産売却をすることができる場合があります。リフォーム前後の売却価格とリフォーム費用を見比べ、実施するか否かを決めましょう。
3. ハウスクリーニング費用
あまりにも家の中が汚れていると、印象が悪くなり売却価格が下がってしまうことも。 最低限水回りはハウスクリーニング業者に依頼し、清掃してもらうようにしましょう。

新居を購入する際に必要な費用
不動産を購入するのに必要な費用にはどのようなものがあるのでしょうか。新居の購入費用、購入時に必要な諸費費用、購入後にかかる諸費用、場合によってはかかる諸費用の3つを紹介していきます。
新居の購入費用
住み替えで新居を購入するときは、いくらの資金が必要なのでしょうか。国土交通省の調査によると、住宅を取得した世帯が用意した新居の取得資金の平均は、以下のとおりです。
- 注文住宅 ※1:5,811万円
(自己資金1,685万円・借入金4,126万円) - 注文住宅 ※2:5,745万円
(自己資金2,440万円・借入金3,305万円) - 分譲戸建住宅:4,290万円
(自己資金1,305万円・借入金2,985万円) - 分譲集合住宅:4,716万円
(自己資金2,279万円・借入金2,437万円) - 既存(中古)戸建住宅:2,983万円
(自己資金1,410万円・借入金1,573万円) - 既存(中古)集合住宅:2,793万円
(自己資金1,338万円・借入金1,456万円)
※出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」
※1:土地の購入資金も含む ※2:建て替え世帯
取得資金の平均がもっとも高いのは注文住宅であり、金額は6,000万円近くにのぼります。
一方、もっとも低いのは中古集合住宅(中古マンション)であり、借入金もあわせても取得資金は2,800万円弱です。
購入資金に占める自己資金の割合は、注文住宅(土地の購入を含む)は29.0%、分譲戸建て住宅が30.4%、分譲集合住宅が48.3%、中古戸建て住宅が47.3%、中古集合住宅が47.9%です。
住宅の種類によっては、取得資金の半分近くの自己資金を準備して取得されていることが見て取れます。
ただし、紹介したデータはあくまで平均値です。諸費用も考慮したうえで慎重に資金計画を立てることで、少ない自己資金でも住み替えが可能な場合もあります。
購入時に発生する主な諸費用
不動産の購入時にかかる諸費用は、購入金額の5〜10%が目安です。
売却時よりも諸費用が高い傾向にあるのは、住宅ローンを借り入れる際に支払う融資事務手数料や損害保険料(火災保険料・地震保険料)などがかかるためです。
購入時に支払う諸費用の内訳は、以下のとおりです。
費用の目安・計算方法 | |
---|---|
登録免許税 | 〇所有権移転登記 ・土地:固定資産税評価額×1.5% ※2026年(令和8年)3月31日までの軽減税率適用後 ・建物:固定資産税評価額×0.3% ※2027年(令和9年)3月31日までの軽減税率適用後 〇所有権保存登記(注文住宅を建てる場合) ・建物の固定資産税評価額×0.15% ※2027年(令和9年)3月31日までの軽減税率適用後 〇抵当権設定登記(住宅ローンを借り入れる場合) 借入金額×0.1% ※2027年(令和9年)3月31日までの軽減税率適用後 |
司法書士報酬 | 5万〜十数万円程度 |
印紙税 | 売買契約書・建築工事請負契約書:5,000〜30,000円ほど ※購入価格に応じて決まる ※2027年(令和9年)3月31日まで軽減税率が適用される 金銭消費貸借契約書:1万〜6万円ほど ※住宅ローンの借入金額に応じて決まる ※軽減税率は対象外 |
融資事務手数料・保証料 | 住宅ローンの3万〜5万円程度+保証料 または 購入金額の2.2%(税込) |
損害保険料 | 10万〜60万円程度(5年契約・一括払い) ※補償内容や保険会社などで変わる |
※中古物件の購入時のみ | 仲介手数料購入価格が400万円超の場合は 「(購入価格×3%+6万円)×消費税」が上限 |
固定資産税・都市計画税の精算金 | 引渡し日と基準日(1月1日または4月1日)を もとに日割り計算した金額 |
※マンションの購入時のみ | 管理費・修繕積立金の精算金引渡し日から月末までを日割り計算した金額 |
新居を購入した場合は「所有権移転登記」、新築した場合は「所有権保存登記」をします。住宅ローンを借り入れた場合は「抵当権設定登記」もしなければなりません。

保証料を一括で支払う場合、金額は返済期間に応じて決まるのが一般的です。また、住宅ローン金利に1〜2%ほど上乗せして保証料を支払える金融機関もあります。
他にも、不動産の売買契約を結ぶ際に「手付金」を支払うケースがあります。手付金の金額は、購入価格の5〜10%程度です。
物件が引き渡される際、手付金は基本的に売買代金に充当されます。ただし、引き渡される前に、買主の都合で契約を解除すると支払った手付金は戻ってきません。
購入後にかかる諸費用
マンション購入後には、不動産取得税がかかることがあります。税額の計算方法は、以下のとおりです。
費用の計算方法 | |
---|---|
不動産取得税 | 土地:課税標準額(固定資産税評価額の1/2)×3.0% 建物:課税標準額(固定資産税評価額)×3.0% |
不動産取得税には軽減措置があるため、課税されないこともあります。
住み替え時の費用を抑えるためのポイント
住み替え時の諸費用は、工夫次第で抑えることが可能です。ここでは、諸費用を抑える方法のうち、以下の2点について解説します。
- 仲介手数料が安い不動産会社を選ぶ
- 複数の金融機関を比較検討する
仲介手数料が安い不動産会社を選ぶ
仲介手数料の金額は不動産会社によって異なります。中には、売主側の仲介手数料を無料や上限の半額などに設定している不動産会社もあります。自宅の売却を依頼する不動産会社を選ぶときは、仲介手数料の金額も比較してみるとよいでしょう。
また、不動産会社に仲介手数料の値引き交渉をするのも1つの方法です。媒介契約を結ぶ前であれば、予算を伝え丁寧な姿勢で交渉することで値下げに応じてくれる場合があります。
ただし、仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶのはおすすめできません。
「担当者が売却活動に力を入れてくれない」「売却や購入の実績が不十分」などの理由で住み替えに失敗するリスクを高めてしまうためです。
仲介手数料の安さのみを重視するのではなく、過去の売却実績やサポートの内容、担当者の実力なども踏まえて総合的に判断することが重要です。
複数の金融機関を比較検討する
金融機関によって保証料や融資事務手数料などの金額が異なります。住宅ローンを借りる際は、複数の金融機関を比較検討することで借入費用を抑えられる可能性があります。
ポイントは、トータルコストを比較することです。
保証料と融資事務手数料のどちらかが低額である場合、もう一方が高額に設定されることが多いため、利息も含めて総額がいくらになるのかを比較するとよいでしょう。
また、保証料を内枠方式で支払える金融機関を選ぶのも1つの方法です。
内枠方式は、住宅ローン金利に0.1〜0.2%程度を上乗せする形で保証料を支払うため、住み替え後の返済負担は増えますが、購入時の諸費用は抑えられます。
一括査定しないと
500万円以上損をするかも!?

住み替えの際に節税できる特別控除や特例

マンションを売却する際に、なるべく費用を抑えたいのであれば、節税対策をしておくことをおすすめします。以下の3つで当てはまるものがあれば、ぜひ使用してみてください。
1. 3,000万の特別控除の特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除)は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
この特別控除を受けることができれば、旧居を売却したときの譲渡所得が3,000万円を上回らない限り譲渡所得税はかかりません。
3,000万円特別控除を適用するためには、いくつか条件を満たす必要があります。条件の例としては以下です。そのほかにもいくつか条件があるので、国税庁のホームページを確認してみてください。
- 自身で住居用として使用していた不動産であること
- 売主と買主が親子や夫婦間などの特別な関係でないこと
なお、3,000万円の特別控除を適用すると、そのあとの一定期間は住宅ローンを組んで新居を購入したときに住宅ローン控除を受けられなくなります。
自分自身にとって3,000万円特別控除と住宅ローン控除のどちらが有利かをよく考えたうえで、適用する特例を決めることが大切です。
2. 所有期間が10年以上の場合の軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例は、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合に、一定の課税譲渡所得にかかる税率が引き下げられる制度です。
この特例を適用できると、本来であれば約20.315%である税率が、課税譲渡所得6000万円まで14.21%(所得税・復興特別所得税:10.21%・住民税4%)に引き下げられます。
また、この特例は上記の3,000万円の特別控除の特例と併用することができます。
3. マイホームの買換え特例
マイホームの買換え特例は、マイホームを売却して新居を購入する際に適用できる特例です。
所定の要件を満たせば、この特例により旧居の売却で生じた譲渡所得に対する課税を、新居をするときまで繰り延べることができます。
税金が免除されるわけではなく、課税を将来に先送りする制度ではあるものの、住み替えの際に譲渡所得税がかからなくなる分、支出を減らせる点はメリットといえます。
マイホームの買換え特例を適用するときも、所定の条件を満たさなければなりません。詳しくは、国税庁のホームページや最寄りの税務署、不動産会社などでご確認ください。
また、マイホームの買換え特例は、3,000万円特別控除や住宅ローン控除との併用ができません。この特例を使うべきかどうか検討する際も、他の特例や税額控除とメリットをよく比較することが重要となります。
4.譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを売却して損失(譲渡損失)が出た場合、その損失をほかの所得と相殺できる特例があります。これを「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例(以下、譲渡損失の損益通算の特例)」といいます。
この特例を適用すると、旧居を売却して発生した譲渡損失を給与所得や事業所得などと損益通算することが可能です。損益通算によって、売却した年の合計所得金額が減ると所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
また、引き切れなかった部分は最長3年間にわたって繰り越せるため、翌年以降の所得と相殺することも可能です。譲渡損失の損益通算の特例を受けるためには、他の特例制度と同様に一定の要件を満たしたうえで確定申告が必要です。
住宅ローンの残債があっても住み替え可能
自宅を売却する際、基本的にはローンを完済して「抵当権」を抹消する必要があります。抵当権は、住宅ローンを組んで購入した物件に設定される権利です。
住宅ローンの返済が長期にわたって滞ったとき、金融機関は抵当権が設定された物件を差し押さえて競売にかけ、得られた金銭を優先的に貸し付けたお金の回収に充てられます。
住宅ローンの返済中である場合、売却代金と自己資金でローンを完済して抵当権を抹消できるのであれば、住み替えは可能です。
たとえば、住宅ローンの残債が2,000万円である場合、自宅の売却代金が2,500万円であり、諸費用の支払いと住宅ローンの完済ができるのであれば住み替えは可能です。
一方で、売却代金が1,500万円であると、住宅ローンの残債を500万円下回ります。住み替えをするためには、不足分の500万円と諸費用分を自己資金でまかなう必要があります。
自己資金が足りない状態で住み替えをする方法
自己資金が足りず、売却後の不足分を支払えない場合は「住み替えローン」や「つなぎ融資」を利用する方法があります。
また、不足分は支払えるものの諸費用をまかなう資金の準備が困難であるときは、住宅ローンや諸費用ローンの利用を検討するとよいでしょう。
住み替えローンを利用する
住み替えローンは、現在抱えているローン残債と新居の購入資金をまとめて借り入れできる商品です。
住み替えローンを利用する場合、住んでいる家の売却と新居の購入を同時に行うため、仮住まいに住む必要がありません。ローン契約は一本であり、二重ローンのように返済日や引き落とし口座などが別々になることもないため、管理の手間や負担を軽減できるでしょう。
ただし、住宅ローンよりも金利が高く審査は厳しい傾向にあります。
また、売却日と購入日を合わせる必要があるため、住んでいる家の売却と新居探しを同時に進めなければなりません。
つなぎ融資を利用する
自己資金が不足している状況で買い先行による住み替えをする場合は「つなぎ融資」を利用する方法があります。
つなぎ融資は、一時的な資金不足を補うための融資です。融資期間は、数か月〜1年と短く、その間は利息だけを支払い元金はまとめて返済するのが一般的です。
買い先行の際につなぎ融資を利用することで、売却代金を受け取る前に新居の購入資金や諸費用を支払うための資金を準備できます。
ただし、つなぎ融資は住宅ローンに比べて金利が高い傾向にあるため、返済負担が重くなりやすい点には注意が必要です。
また、通常の住宅ローンと同様に事務手数料もかかるため、資金計画を入念に立てたうえで利用することが大切です。
住宅ローンの借入額に諸費用分も含める・諸費用ローンを組む
諸費用を支払うための自己資金が不足している場合は、以下2つの方法が考えられます。
- 住宅ローンに諸費用分を組み込む
- 諸費用ローンを組む
金融機関によっては、新居を購入するための住宅ローンの借入額に諸費用分を含めることができます。
また、諸費用を支払う資金を準備できる「諸費用ローン」を利用するのも1つの方法です。
ただし、諸費用分を住宅ローンの借入額に含めると、毎月の返済負担が増えるだけでなく、金融機関の融資審査も厳しくなるのが一般的です。
諸費用ローンについては、通常の住宅ローンよりも金利が高い傾向にあります。
諸費用分も含めた住宅ローンを借り入れや、諸費用ローンの利用を検討するときは、返済負担に問題がないかどうかを返済シミュレーションでよく確認することが大切です。
住み替えの際は信頼できる不動産会社を選ぶ
住み替えを成功させるためには、自宅をできるだけ高く売ることがとくに重要です。
売却価格が高いと、新しい家の購入資金を増やせるだけでなく、ローンの借入額が抑えられて住み替え後の家計への負担を軽くすることもできます。高値で売るためには、信頼できる不動産会社を見つけることが大切です。
不動産の売却は、専門的な知識と経験が求められる取引であり、売り出し価格の設定や販売活動の進め方などで結果が大きく変わってしまいます。
住んでいる家を売却するときは、以下3点をもとに信頼できる不動産会社を選ぶことをおすすめします。
売却実績を確認して選ぶ
売却実績が豊富な不動産会社は、これまでの顧客対応や業務で培われた経験やノウハウをもとにサポートしてくれるため、高値での売却が期待できます。
ホームページや店舗などに掲載される取引実績や顧客からの評価などを確認し、売却が得意な不動産会社を探すとよいでしょう。
担当者の対応にも注目しよう
信頼できる不動産会社ほど、担当者が誠実かつ丁寧に対応してくれるものです。
「質問に丁寧に答えてくれるか」「強引に契約を迫ってこないか」「不動産取引だけでなく税制や法律にも明るいか」などをもとに、信頼できる担当者を探しましょう。
査定結果とその根拠を比較する
不動産会社を選ぶときは、複数の会社に査定を依頼し、算出結果と根拠、販売戦略を聞き比べることも大切です。
「なぜこの価格なのか」「どうしたら売れるか」などを分かりやすく説明してくれる会社は、信頼できる可能性が高いです。限られた時間で複数の不動産会社に物件を査定してもらいたい場合は、一括査定サービスを利用するとよいでしょう。
現在マンションにお住まいであれば、マンションリサーチ株式会社が運営する「マンションナビ」をご活用ください。所在地やマンション名など数項目を入力するだけで最大9社に無料で一度に査定を依頼できます。
住み替えの際によくある質問
最後に、住み替えを検討している人から寄せられることの多い質問とそれに対する回答をご紹介します。
不動産の住み替えの費用まとめ

不動産の住み替えをするときは、住んでいる家の売却と新居の購入のどちらを先に行うのかを決めましょう。
住み替えをする人の多くが売り先行を選びますが、新居探しを優先したいのであれば買い先行、スケジュール調整ができれば同時進行を選ぶのも方法です。
また、不動産の売却時は売却価格の5〜7%、新居の購入時は購入金額の5〜10%程度の諸費用が発生します。諸費用の種類や金額は、状況によって異なるため、不動産会社にも相談し事前に資金計画を立てておきましょう。