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マンションを売却して利益を得たときは、所得税や住民税を納めなければなりません。売却時の利益が大きいほど、税負担は重くなっていきます。
そこで活用したいのが「3,000万円特別控除」です。所定の要件を満たし、3,000万円特別控除を適用できれば3,000万円までの売却益が非課税となります。
本記事では、マンション売却時の利益の計算方法や、3,000万円特別控除制度について分かりやすく解説します。
マンションを売却したときに利益(譲渡所得)が発生した場合、所得税(譲渡所得税)と住民税、復興特別所得税が課税されます。
譲渡所得が発生したときは、所定の条件を満たすと「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除)を適用できます。
ここでは、3,000万円特別控除の制度内容や適用される条件をみていきましょう。
3,000万円特別控除とは、マイホーム(居住用財産)の売却によって発生した譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度のことです。
マンションの売却金額−(取得費 + 譲渡費用)
取得費は、売ったマンションの購入金額や購入時の手数料・税金などを指します。譲渡費用は、マンションを売るときに支払った手数料や税金などです。
たとえば、マンションの売却金額が4,000万円、取得費が3,000万円、譲渡費用が300万円であるとしましょう。
本来であれば、譲渡所得は「4,000万円 − (3,000万円+300万円)=700万円」となるため、譲渡所得税を納める必要があります。
しかし、3,000万円特別控除が適用されると、課税の対象となる譲渡所得が0円となるため、譲渡所得税を納める必要はありません。
3,000万円特別控除を受けられる条件は、以下の通りです。
※参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
※1.以前に住んでいた住宅の場合、住まなくなった日から3年目が経過する日が属する年の12月31日までに売却する
※2.「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除く
適用条件6にある「特別な関係」には、親子や夫婦のほかにも、以下のような人が該当します。
3,000万円特別控除は、原則としてマイホームを売却したときに適用されます。
投資用のマンションや保養目的の別荘などを売却しても、3,000万円特別控除を受けられません。
また、以下のような家屋を売却した場合も、3,000万円特別控除の対象外となります。
※出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
厳密にいうと、譲渡所得税は「課税譲渡所得」に所定の税率をかけて計算します。
ここでは、課税譲渡所得とそれにかかる税率をみていきましょう。
譲渡所得税の課税対象になる譲渡所得(課税譲渡所得)の計算方法は、以下の通りです。
譲渡所得の計算方法は、以下の通りです。
課税譲渡所得 = 譲渡収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額
譲渡収入金額 | ・マンションの売却価格 ・固定資産税・都市計画税の清算金 |
取得費 | マンションの取得にかかった費用 ・マンションの購入代金から減価償却累計費を差し引いた金額 ・購入時の仲介手数料 ・登記費用 ・印紙税 ・設備費 など ※減価償却費累計費とは経年劣化によって低下したと考えられる建物の価値 |
譲渡費用 | マンションの売却時にかかった諸費用 ・仲介手数料 ・印紙税 ・登録免許税 ・家屋の取り壊し費用 など |
特別控除額 | ・3,000万円特別控除 など |
単に譲渡所得というときは、特別控除額を差し引く前の金額を指します。
マンションを購入したときの売買契約書が残っておらず取得費が分からないときや、譲渡収入金額の5%を「概算取得費」とすることができます。
また、実際の取得費が譲渡収入金額の5%を下回るときも、概算取得費を用いて課税譲渡所得金額を計算することが可能です。
たとえば、譲渡収入金額が4000万円である場合、概算取得費はその5%の200万円です。
譲渡所得税の計算方法は、以下の通りです。
譲渡所得税 = 課税譲渡所得×税率
譲渡所得税の税率は「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」で異なります。
譲渡所得が短期譲渡所得か長期譲渡所得のどちらに該当するかは、マンションを売却した年の1月1日における所有年数で決まります。
所有期間 | 区分 | 税率 |
---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.630%
(所得税30%+住民税9%+特別復興所得税0.63%) |
5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315%
(所得税15%+住民税5%+特別復興所得税0.315%) |
よって、所有期間が5年以下のときに売却して譲渡所得が発生したときのほうが、税率が高くなって税負担が増えます。
ここで、3,000万円特別控除を利用した場合の税額をシミュレーションで確認してみましょう。
まず、以下の条件をもとに譲渡所得や税額をシミュレーションします。
最初に、取得費用を求めるための減価償却費を定額法で計算します。
減価償却費(定額法)=建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
=2,000万 × 0.9 × 0.015 × 8年
=216万円
よって取得費用は、以下の通りです。
取得費用=購入時の価格-減価償却費用-購入時の諸費用
=4,000万円-216万円-250万円
=3,534万円
次に、譲渡所得を計算します。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 - 譲渡費用 - 取得費用
=5,000万-300万円-3,534万円
=1,166万円
3,000万円特別控除が適用されると、計算結果の1,116万円から3,000万円が控除されて譲渡所得が0円となり所得税や住民税、復興特別所得税は課税されません。
譲渡所得の金額ごとに、3,000万円特別控除を適用したときと、適用しないときの税額を試算すると、結果は次のとおりとなります。
〇所有期間が5年以内の場合の税額
譲渡所得 | 控除を適用しないときの税額 | 控除適用時の税額 |
---|---|---|
1,000万円 | 396万円 | 0円 |
2,000万円 | 793万円 | 0円 |
3,000万円 | 1,189万円 | 0円 |
4,000万円 | 1,585万円 | 396万円 |
5,000万円 | 1,982万円 | 793万円 |
6,000万円 | 2,378万円 | 1,189万円 |
7,000万円 | 2,774万円 | 1,585万円 |
8,000万円 | 3,170万円 | 1,982万円 |
9,000万円 | 3,567万円 | 2,378万円 |
1億円 | 3,963万円 | 2,774万円 |
2億円 | 7,926万円 | 6,737万円 |
〇所有期間が5年超の場合
譲渡所得 | 控除を適用しないときの税額 | 控除適用時の税額 |
---|---|---|
1,000万円 | 203万円 | 0円 |
2,000万円 | 406万円 | 0円 |
3,000万円 | 609万円 | 0円 |
4,000万円 | 813万円 | 203万円 |
5,000万円 | 1,016万円 | 406万円 |
6,000万円 | 1,219万円 | 609万円 |
7,000万円 | 1,422万円 | 813万円 |
8,000万円 | 1,625万円 | 1,016万円 |
9,000万円 | 1,828万円 | 1,219万円 |
1億円 | 2,032万円 | 1,422万円 |
2億円 | 4,063万円 | 3,454万円 |
譲渡所得が3,000万円を下回るとき、特別控除を適用できると数百万円の税負担を軽減できることがあります。
譲渡所得が3,000万円を超える場合でも、所有期間が5年以内であれば約1,189万円、5年を超える場合でも約609万円もの税負担を軽減することが可能です。
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マンションを売却して譲渡所得が発生した場合や、3,000万円特別控除を受ける場合は確定申告が必要です。確定申告とは年間の所得に対する所得税を計算して、税務署(国)に申告・納税する手続きです。
会社員や公務員の給与所得者は、勤務先が毎月の給与から所得税を天引きし、年末調整で正しい税額に精算して、従業員の代わりに所得税を納めてくれます。
しかし、マンションの売却によって発生した譲渡所得に対する所得税は、年末調整では精算できません。3,000万円特別控除のような特例も年末調整では申告できないため、自分自身で確定申告をする必要があります。
確定申告は、マンションを売却した翌年の2月16〜3月15日にする必要があります。
※土日祝日により前後することがあります。
たとえば、2023年にマンションを売却したのであれば、2024年2月16日〜3月15日のあいだに確定申告をしなければなりません。
譲渡所得が3,000万円以下であり、特別控除を適用すると課税譲渡所得が0円となる場合でも、確定申告は必須です。
確定申告の流れは、以下の通りです。
①確定申告に必要な書類を集める
②譲渡所得を計算する
③確定申告書類を作成する
④税務署に確定申告の書類を提出する
確定申告は、税務署へ書類を持参または郵送する他に、e-Taxを利用する方法もあります。
e-Taxであれば、オンライン上で24時間いつでも確定申告をできます。ただし、e-Taxを利用するためには、マイナンバーカードとそれを読み取れるスマートフォン(またはICカードリーダライタ)が必要です。
例年、確定申告の時期は税務署が混み合うため、書類の記入方法や申告方法などで不明点がある場合は早めに問合せましょう。
期限内に確定申告を終えることが難しい場合は、税理士に依頼するのも1つの方法です。
3,000万円の特別控除を適用する際に、必要な確定申告の書類は以下の通りです。
確定申告書
本人確認書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード+運転免許証など)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
また、マンションの売買契約が成立する前日の時点で、売主の現住所とその売却したマンションの住所が異なる場合、売却したマンションに住んでいたことを証明する以下のいずれかの書類を添付する必要があります。
戸籍の附票の写し
消除された戸籍の附票の写し
その他、売却したマイホームに住んでいたことを証明する書類
確定申告書や譲渡所得の内訳書は、最寄りの税務署や国税庁のホームページで入手できます。
また、国税庁のホームページ内にある「確定申告書作成コーナー」を利用すると、必要項目を入力するだけで、簡単に確定申告書や譲渡所得の内訳書を作成可能です。
譲渡所得の内訳書を作成する際は、ご自身で譲渡所得を計算する必要があるため、マンションの売買契約書や諸費用の領収書などを準備しましょう。
3,000万円特別控除は、マイホームの売買に関する他の特例と併用できないことがあります。また、マンションを売却するタイミングによっては、3,000万円特別控除を適用できません。
ここでは、3,000万円の特別控除を適用する際に押さえておきたい4つの注意点をご紹介します。
住宅ローン控除とは、年末時点における借入残高の0.7%の金額を所得税や住民税から控除してもらえる制度です。控除期間は最大10年または13年となります。(2023年4月現在)。
住み替え先のマンションに入居した年と前年、前々年に、3,000万円の特別控除を適用していると、住宅ローン控除は受けられません。
3,000万円の特別控除と住宅ローン控除の両方を適用できる場合、より高い節税効果が期待できる方を選択しましょう。
マンションを売却した年と前年、前々年に「マイホームの買換え特例」や「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例」を受けている場合も、3,000万円特別控除は適用できません。
マイホームの買換え特例とは、マイホームを売却して新居を購入するときに適用できる特例です。
所定の要件を満たすと、譲渡所得に対する課税を、新しく購入したマイホームを売却するときまで先送りすることができます。
マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例は、マイホームを売却して赤字(譲渡損失)が出た場合に、その損失を給与所得などと相殺できる制度です。
控除しきれなかった譲渡損失は、マイホームを譲渡した翌年以降の最大3年間にわたって繰り越し、それぞれの年の所得から差し引くことができます。
損益通算及び繰越控除の特例を適用できるのは、マイホームを買い換えたときや、住宅ローンが残るマイホームの売却により、譲渡損失が発生したときです。
マイホームの買換え特例や、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例を適用している場合、その後2年間は3,000万円の特別控除を適用できなくなります。
マイホームを売却するときや買い替えをするときは、自分自身の状況にもっとも適した特例を選ぶことが大切です。
3,000万円特別控除は、10年超所有軽減税率の特例との併用が可能です。
この特例は、売却した居住用不動産の居住年数が10年を超えるとき、課税譲渡所得6,000万円までにかかる税率が、約14.21%に引き下げることができるというものです。
たとえば、マンションを売却したときの課税譲渡所得が2,000万円である場合、10年超所有軽減税率の特例を受けられると、税額は「2,000万円×14.21%=284.2万円」となります。
所有期間が5年を超えるマンションを売却したときの課税譲渡所得が2,000万円であると、本来の税額は「2,000万円×20.315%=406.3万円」です。
そのため、この特例を適用することで、122.1万円の税負担を軽減できたことになります。
3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例を併用することで、マンションを売却したときの税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
3,000万円の特別控除を適用するためには、居住していた住宅を売却するか、居住しなくなった日から3年が経過した年の年末までに住宅を売却しなければなりません。
たとえば、2022年4月1日から居住しなくなった場合、2025年12月31日までに住宅を売却し、他の要件を満たしているのであれば3,000万円特別控除を適用できます。2026年1月1日以降に売却しても、3,000万円特別控除は適用できません。
災害によって家屋が消失した敷地の売却時に3,000万円特別控除を適用するためには、住まなくなった日から3年が経過する年の12月31日までに売却する必要があります。
また所有者が老人ホームに入居している場合、自宅をいつでも帰れるような状態にしていても、居住用の財産と認められず3,000万円の特別控除を適用できないケースがあります。
3,000万円の特別控除と住宅ローン控除は併用できない
マンションを売却するタイミングによっては3,000万円の特別控除を利用できない
3,000万円特別控除は、居住していたマンションの他にも相続したマイホームや建物を取り壊したあとの土地などを売却するときも対象となるのでしょうか。
ここでは、マンション以外の不動産を売却するときに、3,000万円特別控除が適用できるかどうかを事例ごとに解説します。
親や兄弟などから相続した空き家を売却するときは「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、相続空き家の3,000万円特別控除)」を適用できることがあります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、相続や遺贈(遺言によって特定の人に財産を贈ること)で取得した不動産を売却するとき、所定の要件に当てはまると譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できる制度です。3,000万円特別控除とは別の制度となります。
相続空き家の3,000万円特別控除の対象となる不動産は、亡くなった人(被相続人)が住んでいた建物や、その敷地などのうち、以下の要件すべてに当てはまるものです。
※出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
「亡くなった人が老人ホームに入居していた」などの理由で、相続が開始された時点で被相続人が住んでいなかった不動産を売却したときも、一定の要件を満たせば控除が受けられます。
共有名義の不動産を売却した場合、共有名義人の各自が3,000万円特別控除を使えます。
たとえば、売却した不動産が夫婦の共有名義であり、持分割合が夫2:妻1、譲渡所得が全体で3,000万円であるとしましょう。
税額を計算するときの譲渡所得は、持分割合に応じて按分されるため、夫2,000万円、妻1,000万円となります。
夫と妻のそれぞれが3,000万円特別控除を適用すると、課税の対象となる譲渡所得金額はどちらも0円となり、夫婦は税金を納めなくてよくなります。
ただし、敷地のみを共有している場合は、建物の所有者以外は3,000万円特別控除を適用できません。
マイホームが戸建住宅である場合、建物を取り壊したあとに土地のみを売却する場合、以下2つの要件を満たせば3,000万円特別控除を適用できます。
※出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
たとえば、建物を取り壊してから2年後に敷地を譲渡する契約を結んだり、取り壊したあとの土地にコインパーキングを設置して賃料収入を得たりすると、3,000万円特別控除は適用できません。
住宅の一部が店舗となっている店舗併用住宅を売却したときも、要件を満たしていれば3,000万円特別控除の対象となります。
3,000万円特別控除が適用されるのは、自分自身が住んでいた部分にかかる譲渡所得のみであり、店舗部分については対象になりません。
ただし、住宅部分が全体の9割を超えている場合は、建物のすべてを居住部分として3,000万円特別控除を適用することができます。
住宅部分と店舗部分の割合は、床面積をもとに判定します。そのため、確定申告で3,000万円特別控除を申請する際は、住宅の床面積が分かる書類が必要です。
趣味や娯楽、保養のために所有する家屋は、3,000万円特別控除の対象外です。
そのため、別荘を売却したときは、3,000万円特別控除を適用できません。
住んでいたマンションを売却したとき「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用すると3,000万円までの譲渡所得が非課税となります。
そのため、この特例を適用できれば、譲渡所得税の負担を大幅に軽減することが可能です。
ただし、3,000万円特別控除を受けるためには要件を満たす必要があり、他の特例や特別控除と併用ができないことがあります。
マンションの売却時に譲渡所得が発生するときは、不動産会社や最寄りの税務署、税理士などにも相談し、ご自身にとってもっとも有利な制度を選ぶことが大切です。
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大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。
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