マンション売却時の税金と節税方法とは?計算方法やシミュレーション例を解説!

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マンションの売却には、税金がかかります。しかし、自宅マンションを売却する場合には、税額を大幅に抑えられる控除特例が適用となる可能性があります。税優遇を受けるには、マンションを売却した翌年の確定申告で控除特例の申請が必要です。

「知らなかった」「申告しなかった」となれば、多額の税負担が発生する可能性も否めません。そこで本記事では、マンション売却時に発生する税金と税負担を軽減できる控除特例について解説します。

目次

マンション売却にかかる税金の種類と特徴

マンションを売却する際には、次のようにさまざまな税金が課されます。 

 税金金額納税するタイミング
1.印紙税5,000〜30,000円(売買価格500万円超1億円以下)売買契約締結時
2.登録免許税不動産1つにつき1,000円
※司法書士の報酬と合わせると10,000〜30,000円程度
抵当権抹消登記の依頼時
3.消費税仲介手数料(物件価格×3%+6万円)の10%売買契約締結時
4.所得税譲渡所得の15%もしくは30%売却した翌年の確定申告時
5.住民税譲渡所得の×5%もしくは9%売却した翌年の6月
※住民税を給与から特別徴収する場合は6月から天引き開始
6.復興特別所得税譲渡所得の×0.315%もしくは0.63%売却した翌年の確定申告時

譲渡所得税とその他の税金について

上記すべての税金が必ず課されるとは限りません。所得税・住民税・復興特別所得税は「譲渡所得税」と呼ばれ、マンション売却で譲渡所得(≒売却益)が発生した場合に限り課税される税金です。

一方、印紙税・登録免許税・消費税は課される可能性が高い税金です。まず印紙税は、不動産売買契約書を紙で発行する場合に必要な税金です。電子契約の場合は非課税となります。

登録免許税は、マンションの売却時に住宅ローンを完済する際の抵当権抹消に課される税金です。住宅ローンをすでに完済している場合、あるいは住宅ローンを組んでいない場合は、売却時に課されることはありません。

最後に消費税ですが、個人の売主がマンションを売却する際には、マンションに対して消費税は発生しません。個人事業主や法人の場合も、免税事業者(非課税事業者)であれば同様です。しかし、不動産会社に支払う仲介手数料には個人や法人にかかわらず消費税が課税されます。

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譲渡所得の計算方法とシミュレーション

マンション売却にかかる譲渡所得税のご紹介

さて、続いては「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」についての説明です。

「譲渡所得」とは、マンション売却時の利益のこと。利益が発生した場合に限り、譲渡所得税(住民税・所得税・復興特別所得税)が課されます。しかし、譲渡所得は単純にマンションを売却した価格からマンションを購入したときの価格の差額を指すわけではありません。

では、譲渡所得税はどのように算出されるのでしょうか?計算方法を順番に見ていきましょう。

「譲渡所得」の算出方法

まずは、マンション売却でどれくらいの利益が出たのか計算します。譲渡所得の計算式は、以下の通りです。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - 譲渡費用 - 取得費用

 内容
譲渡収入金額マンションの売却価格+固定資産税・都市計画税の清算金
譲渡費用マンション売却の諸費用
(仲介手数料・印紙税・登録免許税)
取得費用マンションの購入代金+購入時の仲介手数料+設備費から減価償却累計費を差し引いた金額

譲渡費用は、リフォーム代などマンション売却にかかった経費も計上が可能です。詳細を知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

「減価償却費」の算出方法

マンションの譲渡所得を算出する際の「取得費用」は、減価償却累計費を差し引いた金額で考えます。

減価償却費とは、建物が経年劣化によって低下したと考えられる価値に相当する金額です。そのため、減価償却するのはマンションの建物部分だけです。

減価償却費の計算式は、以下の通り。

減価償却費の計算方法

減価償却費(定額法)=建物購入代金×0.9×償却率×経過年数

こちらの記事で、マンション売却時の減価償却費の算出方法を分かりやすく解説しておりますのでご参照ください。

「譲渡所得税」の税率と計算例

譲渡所得額が計算できたら、以下の計算式で譲渡所得にかかる税金を計算します。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税= 譲渡所得金額 × 税率

税率は、以下のようにマンションの所有期間が5年以下か5年超かで異なります。

所有期間区分税率
5年以下短期譲渡所得39.630%
(所得税30%+住民税9%+特別復興所得税0.63%)
5年超長期譲渡所得20.315%
(所得税15%+住民税5%+特別復興所得税0.315%)

所有期間は、マンションを売却した年の1月1日時点のものです。

たとえば、2015年5月に購入したマンションを2020年6月に売却した場合。実質的な所有期間は5年を超えていますが、2020年1月1日時点では5年以下となり、39.630%の税率がかかりますのでご注意ください。

シミュレーション例

マンションを売却した際にかかる税金のシミュレーション

なにかとわかりにくい、マンション売却時の税金。ここからは、マンションを売却したときの譲渡所得税をシミュレーションしてみます。条件は、以下の通りです。

シミュレーション条件
  • 購入時の価格:6,000万円(土地3,000万円・建物3,000万円)
  • 売却時の価格:7,000万円
  • 所有期間:6年
  • 譲渡費用:400万円
  • 購入時の諸費用:300万円
  • 特別控除:なし

まずは「取得費」を求めるために、減価償却費を計算します。

Step.1 減価償却費を算出

減価償却費=建物購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
=3,000万 × 0.9 × 0.015 × 6
243万円

減価償却費が算出できたら、「取得費用」の計算ができます。

Step.2 取得費を算出

取得費用=購入時の価格-減価償却費用-購入時の諸費用
=6,000万円-243万円-300万円
5,457万円

続いて「譲渡所得」を算出します。

Step.3 譲渡所得を算出

譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用-特別控除額
= 7,000万円 – 400万円 – 5,457万円 – 0円
= 1,143万円

このケースでは、譲渡所得が1,143万円と計算できました。マイホームを売却する場合、3,000万円の特別控除を受けると譲渡所得の金額は0円となり所得税や住民税、復興特別所得税は課税されません。

一方で、買い換えの特例を利用する場合、1,143万円の譲渡所得に対する課税は、住み替えたマイホームを売却するときに繰り越されます。

もし投資マンションを売却するときのように3,000万円の特別控除を受けない場合、売却した物件の所有期間は6年ですので、税額は「長期譲渡所得」に対する税率を用いて計算します。

Step.4 税額を算出
  • 所得税:1,143万円×15%=1,714,500円
  • 住民税:1,143万円×5%=571,500円
  • 復興特別所得税:1,143円×0.315%=36,004円
  • 納税額合計:1,714,500円+571,500円+36,004円=2,322,004円

所得税と復興特別所得税の合計金額である1,750,504円は、確定申告時に納めます。

住民税の571,500円の納め方は、売却益を得た翌年の6月に一括で納めるか4分割の普通徴収、12分割して給与天引きで納める特別徴収のどちらかを選択可能です。

マンション売却における節税方法と控除特例

マンションの売却時に譲渡所得が発生しても、控除特例を受けることで税負担を軽減することが可能です。

譲渡所得の金額によっては譲渡所得税がゼロになることもありますので、これからマンションを売却される方は必ず控除特例の存在を知っておくようにしましょう。

3,000万円の特別控除(マイホーム特例)とその他の控除

居住用の物件であり、ご自身が実際に住んでいたマンションであれば「3,000万円の特別控除(マイホーム特例)の適用により譲渡所得から3,000万円を控除できます。つまりマイホームを売却する場合、特例を受けると譲渡所得が3,000万円を超えない限り所得税や住民税、復興特別所得税は課されません。

3,000万円の特別控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

3,000万円の特別控除を受けるための主な要件
  1. 実際に売主が居住している(居住していた)家
  2. 転居したのちに売却となった場合は、転居3年後の12月31日までに売却
  3. 災害などにより家屋がなくなった場合は、その日から3年後の12月31日までに敷地だけを売却
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合は、転居3年後の12月31日まで、あるいは取壊し後1年以内どちらか早い日付までに売却
  5. 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換えやマイホームの交換の特例もしくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない
  6. 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でない

軽減税率の特例

3,000万円の特別控除を適用しても譲渡所得が控除しきれない場合は、所有期間が10年を超えるマイホームに限り「軽減税率の特例」が適用できます。同特例を適用すると、税率は以下のように軽減します。

課税長期譲渡所得金額(=A)税額
6,000万円以下A×10%
6,000万円超(A−6,000万円)×15%+600万円

買い換え特例

買い換え特例」」は、譲渡所得を控除する効果はなく、課税自体を繰り延べられる特例です。繰り延べられるのは、買い換え先の不動産を売却するときまでです。主な適用要件は、次のとおりです。

買い換え特例を受けるための主な要件
  1. 実際に売主が居住している(居住していた)家
  2. 転居したのちに売却となった場合は、転居3年後の12月31日までに売却
  3. 売った年、その前年及び前々年に3,000万円の特別控除や軽減税率の特例もしくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない
  4. 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でない
  5. 買い換え先の建物の床面積は50㎡以上で買い換える土地の面積は500㎡以下
  6. マイホームを売った年の前年から翌年までの3年間にマイホームを買い換え

節税対策と注意点

自宅マンションの売却や買い換え時に、譲渡所得を控除できる特例が複数あります。しかし、中には併用ができない控除特例もありますのでご注意ください。

併用できない控除特例
  • 3,000万円特別控除・軽減税率の特例と住宅ローン控除
  • 買い換え特例と3,000万円特別控除・軽減税率の特例

また、確定申告は譲渡所得が出た場合に限り必須ですが、譲渡所得がマイナスになり譲渡損失となった場合も、以下の特例を適用することによって節税できる可能性があります。

  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除特例

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マンション売却の際の税金の確定申告について

マンション売却にかかる譲渡所得税の納付、および控除特例の適用を受けるには、マンションを売却した翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告をする必要があります。

確定申告での節税方法

3,000万円特別控除をはじめ、マンション売却時に利用できる控除特例は、適用要件をすべて満たしているからといって自動的に適用されるわけではなく、確定申告をもって適用されます。

譲渡所得税の計算式からもわかるように、取得費や売却にかかった諸費用などを漏れなく計上することで税額は抑えられます。購入当時の売買契約者などを紛失してしまい正しく計上できない場合は「みなし取得費」として売った金額の5%相当額を取得費とすることになることから、税額が上がってしまうおそれがあります。

確定申告で節税するポイントは、漏れなく経費を計上し、適用となる控除特例を知ることです。

確定申告の必要性と手順

マンションを売却した翌年確定申告の手順は、次のとおりです。

  1. 確定申告に必要な書類を集める
  2. 譲渡所得税の計算をする
  3. 書類を作成する
  4. 税務署での手続きをする

申告が必要にもかかわらず申告をしなかったり、遅滞したりすると、加算税や延滞税が課されるためご注意ください。

計算方法がわからない・どんな控除特例が適用になるか知りたい・手間と時間をかけずに申告したいといった場合は、税理士に相談することをおすすめします。

マンションの売却で譲渡所得税がかからない場合について

譲渡所得税は、マンションを売却したすべての人に課される税金ではありません。課税されるのは、マンションの売却で譲渡所得が出て、控除特例を適用してもなお譲渡所得税がプラスとなる場合です。

課税されない条件とは?

譲渡所得税は、次のようなケースでは課税されません。

  • そもそも譲渡所得が出ていない
  • 譲渡所得が出ても控除特例でゼロ以下にできた

マンションの譲渡所得税が非課税になる具体例

マイホームのマンションであれば、要件さえ満たせば3,000万円の特別控除が適用となるため、多くの場合、非課税とすることができます。

たとえば、3,000万円で購入し、6年後に5,000万円とかなり値上がりしたマンションを売却したケースを想定してみあしょう。

シミュレーション条件
  • 購入時の価格:3,000万円(土地1,000万円・建物2,000万円)
  • 売却時の価格:5,000万円
  • 所有期間:6年
  • 譲渡費用:200万円
  • 購入時の諸費用:200万円
  • 特別控除:3,000万円の特別控除
  • 減価償却費=2,000万円(建物購入代金) × 0.9 × 0.015(償却率) × 6(経過年数) 162万円
  • 取得費用=3,000万円(購入時の価格)- 162万円(減価償却費)- 200万円(購入時の諸費用)2,638万円
  • 譲渡所得金額 = 5,000万円(譲渡収入金額) − 200万円(譲渡費用) − 2,638万円(取得費用) − 3,000万円(特別控除額)−838万円

上記のように、購入時より2,000万円高く売れた場合も「3,000万円特別控除」の適用により譲渡所得をゼロ以下にすることができました。譲渡所得がマイナスのため、税金はゼロです。所有期間が長かったり、さらに高額で売れたりした場合は同特例を適用しても譲渡所得が出る可能性がありますが、その場合は軽減税率の特例で税額を抑えることができます。

マンション売却する際の税金についてのよくある質問

マンションを売却する際の税金について、よくある質問に回答します。

マンション売却で損失が出た場合も税金は発生しますか?

マンション売却では損失が出たとしても一律で課税されるものがあります。具体的には以下のとおりです。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 仲介手数料に課される消費税

譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課されるのは、譲渡所得(≒売却益)が発生した場合のみです。

マンション売却時の税金の納付期限と納付方法は

各税金の納付期限と納付方法は以下のとおりです。

納税期限納付方法
1.印紙税売買契約締結時収入印紙を購入して売買契約書に貼付
2.登録免許税抵当権抹消登記の依頼時収入印紙を購入して登録免許税納付用台紙に貼付する、もしくは司法書士に登記費用とまとめて支払う(現金もしくは振り込み)
3.消費税売買契約締結時不動産会社へ支払う(現金もしくは振り込み)
4.所得税売却した翌年の確定申告時振替納税、e-tax、クレジットカード、コンビニ払い、金融機関や税務署で現金納付
5.住民税売却した翌年の6月※住民税を給与から特別徴収する場合は6月から天引き開始給与からの天引き(特別徴収)金融機関の窓口やコンビニ、役場の窓口で現金納付(普通徴収)一部の自治体ではクレジットカード決済可
6.復興特別所得税売却した翌年の確定申告時振替納税、e-tax、クレジットカード、コンビニ払い、金融機関や税務署で現金納付
マンション売却時の税金を抑える方法は?

マンション売却時の税金を抑えるには特別控除や特例を活用しましょう。マンション売却時に受けられる代表的な特別控除や特例は以下のとおりです。

  • 3,000万円の特別控除(マイホーム特例)
  • マイホームを売ったときの軽減税率の特例(所有期間10年超えの軽減税率の特例)
  • 特定の居住用財産の買い換えの特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除特例

それぞれに要件があるため、要件に該当しているか確認してみましょう。

まとめ:マンション売却する際の税金の理解と節税戦略

まとめ
  • マンション売却で高額になる可能性のある税金は「譲渡所得税」
  • 譲渡所得にかかる税率はマンションの所有期間によって異なる
  • 自宅マンション売却では「3,000万円特別控除」などの適用により譲渡所得税がかからないことも
  • 併用できない控除特例があるので注意
  • 控除特例の適用申請はマンション売却の翌年の確定申告で

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FP監修者
品木彰

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
品木彰

大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。

監修者
曾我隆二

保有資格:公認会計士・税理士
曾我隆二

神奈川県藤沢市出身、神奈川県立湘南高等学校卒業、一橋大学商学部卒業後、1986年に野村證券株式会社(3年間)、1989年に株式会社リクルート(4年半)を経て、公認会計士の世界へ。中央クーパース・アンド・ライブランド・アドバイザーズ株式会社(中央監査法人グループ)を経て、2003年に公認会計士曾我事務所として独立開業し、現在は千代田区二番町にてSKIP税理士法人に組織変更し、代表社員。2017年8月に社会福祉法人虹の会(川崎市)を設立し、理事長として保育事業にも携わる。また、2019年4月には、SKIP監査法人を設立し代表社員に就任。

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この記事を書いた人

亀梨奈美のアバター 亀梨奈美 不動産ジャーナリスト/株式会社realwave代表取締役

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。
2020年11月 株式会社real wave 設立。
不動産会社在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。
不動産業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに各メディアにて不動産記事を多数執筆。

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