中古マンション価格の動きから“街の今”を読み解く月次連載、第6回のテーマは「城北エリア」。今回取り上げるのは、文京区・豊島区・北区・荒川区・板橋区・足立区の6区です。
湾岸・城南エリアに注目が集まりがちな東京23区の中で、城北エリアは「価格の手頃さ」と「交通利便性の向上」、そして「再開発の進展」により、いま改めて再評価されています。
とくに今回の調査では、文京区が上昇率8位にランクイン。その他にも、足立区が9位、荒川区が14位と続き、23区内でも存在感を見せています。
本記事では、具体的な数値や比較データを交えながら、城北エリアのマンション価格の推移を分かりやすく解説します。
調査期間: 2016年8月~2025年8月
調査機関: マンションナビ
調査対象: 東京都23区のマンション
データ基準: 調査期間中の東京都23区におけるマンション売買価格の中央値
「マンション売買価格の中央値」を指標とすることで、市場の動きや価値の変化を多角的に分析できます。
上昇率=(現在の値ー基準値)÷基準値×100%
【例】1年前に1,000,000円だった㎡単価が、現在は1,250,000円の場合。
(1,250,000-1,000,000)÷1,000,000×100=25…よって25%の上昇率がみられる。
東京全体から城北エリアの価格比較(2016年→2025年)
東京23区全体と比較することで、城北エリアの価格上昇がどれほど際立っているかがより明確になります。ここでは、まず東京都全体、そして23区全体の価格推移を確認した後、城北エリアの動向と比較します。
東京都全体の平均価格
2025年8月時点での東京都全体の中古マンション平均売買㎡単価は106万円で、9年前と比べて65.4%上昇しています。 直近1年間でも15.7%の上昇が見られ、堅調な価格推移が続いています。
引き続き上昇傾向は続くと想定されるでしょう。


東京23区全体の平均価格

2025年8月時点での東京23区における中古マンションの平均売買㎡単価は約110万円でした。
これは2016年(9年前)の約65万円と比べて約63%の上昇となっており、都内マンション価格は依然として右肩上がりの傾向が続いています。
東京都全体よりも高い水準で推移しており、都心部を中心とした価格上昇が牽引しています。
城北エリア6区の平均価格と位置づけ
文京区の2025年8月時点での中古マンションの平均売買㎡単価は121万円で、9年前の基準値と比較して約63%もの上昇率を記録しています。 直近1年間でも11.1%の上昇が見られます。
また、豊島区の2025年8月時点での中古マンションの平均売買㎡単価は107万円で、9年前の基準値と比較して約60%もの上昇率を記録しています。 直近1年間でも11.1%の上昇が見られます。
一方、文京区と豊島区を除く城北エリア4区(北区・荒川区・板橋区・足立区)の中古マンションの平均売買㎡単価は57~85万円で推移。
都心部(中央区167万円/㎡)と比べれば価格差は大きいものの、「住みやすさ」や「内部の再開発」の進展によって着実な上昇となっています。












マンション価格変動の背景とポイント(城北エリア)
城北エリアの価格上昇には、他エリアとは異なる3つの要因があります。
- 交通利便性の向上
山手線・メトロ・都営線など複数路線が交差するエリアが多く、都心に通勤する家庭には魅力の高いロケーションが結ばれます。 - 再開発の進展
文京区や荒川区では医療施設・大学・商業施設の整備が進行中。板橋区でもタワーマンション開発が続いています。このように商業施設や歴史的な文教エリアとの融合が進んでいることから、非常に高い家庭ニーズを持続的に受け入れる基盤ができています。
- 生活利便性と子育て支援
城北エリアは、子育て支援サービスや行政サービスが充実しており、家庭による平均所得広がっていることも背景にあります。
これらの結果、城北エリアは「文教性」「家庭支援」「再開発」という角度から、実需・投資どちらにとっても安心できるマーケットを作り上げています。
東京23区価格上昇率ランキング(2025年8月時点)
東京23区における9年前との上昇率をランキング形式で紹介します。過去9年間で各エリアがどのように変動してきたのかを可視化しました。
売買の最適なタイミングを見極めるヒントとして、ぜひご活用ください。
23区 2025年8月時点
順位 | 23区 | 上昇率(9年前比) | ㎡単価(万円) |
---|---|---|---|
1 | 港区 | 126.3% | 234.0 |
2 | 千代田区 | 105.3% | 199.0 |
3 | 中央区 | 101.2% | 167.0 |
4 | 渋谷区 | 96.6% | 184.0 |
5 | 江東区 | 73.3% | 107.0 |
6 | 新宿区 | 68.8% | 127.0 |
6 | 品川区 | 68.8% | 126.0 |
8 | 文京区 | 63.3% | 121.0 |
9 | 足立区 | 63.1% | 57.0 |
10 | 目黒区 | 61.4% | 132.0 |
11 | 豊島区 | 60.3% | 107.0 |
12 | 台東区 | 60.1% | 103.0 |
13 | 葛飾区 | 57.0% | 60.0 |
14 | 荒川区 | 55.9% | 81.0 |
15 | 北区 | 51.6% | 85.0 |
16 | 世田谷区 | 50.9% | 101.0 |
17 | 江戸川区 | 47.4% | 64.0 |
18 | 墨田区 | 46.9% | 89.0 |
19 | 中野区 | 46.3% | 93.0 |
20 | 板橋区 | 42.6% | 68.0 |
21 | 杉並区 | 40.0% | 87.0 |
22 | 練馬区 | 38.2% | 72.0 |
23 | 大田区 | 36.6% | 81.0 |
23区 城北エリア6区の注目ポイント
文京区(8位)
教育・医療・文化の集積地であり、本郷や湯島といった文教エリアに加え、春日・千駄木・小石川などのブランド住宅地が相場を牽引しています。利便性と落ち着いた住環境のバランスから、堅調な需要が続いています。
足立区(9位)
価格水準は23区内でも比較的手ごろですが、北千住・綾瀬・五反野など再開発が進むエリアが評価され、価格上昇率では上位にランクイン。生活利便性とアクセスの良さを背景に、実需層からの人気が高まっています。
豊島区(11位)
池袋を中心に、目白・大塚・巣鴨など多様な住宅ニーズに応える街づくりが進行中。駅前再開発や商業施設の整備が進み、ファミリー層・投資層ともに関心を集めるエリアです。
荒川区(14位)
再開発が進む南千住・日暮里エリアが注目を集めています。複数路線が乗り入れるアクセスの良さに対し、価格水準は比較的控えめで、コストパフォーマンスを重視する層に選ばれています。
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北区(15位)
赤羽や王子といった駅周辺の再開発が進む一方、西ヶ原や中里など閑静な住宅街も点在。多様なニーズに応える住環境が評価され、“城北のホールラウンドプレイヤー”として存在感を増しています。
板橋区(20位)
都心へのアクセス利便性とファミリー向けの落ち着いた住環境が魅力。東武東上線・都営三田線沿線を中心にじわじわと人気が広がっており、将来的なポテンシャルも注目されています。
このように、城北エリアは「特徴は異なるが、基礎力の高い街」が集積している点が最大の強みです。都心部との価格差がある一方で、住環境や利便性、再開発による資産価値の向上が期待できるエリア群といえるでしょう。
よくある質問
まとめ|城北エリアのマンション価格の今とこれから
城北エリアは、「都心アクセスの良さ」×「価格の割安さ」×「将来性」を兼ね備えたエリア群です。価格水準としては23区の平均より控えめですが、生活利便性や災害対策、子育て支援、再開発による将来価値など、複合的に評価できるエリアが多く存在します。
今後、東京23区全体の価格が高止まりする中で、「割安感」と「住み心地」のバランスで選ばれるのが城北エリア。実需・投資どちらの視点からも注目すべきエリアと言えるでしょう。
データ提供/マンションナビ