不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/06

    この相談は、「認知症になったら絶対に売れない」と断定せず、
    本人の判断能力がポイントであること、
    そして判断能力があるうちに任意後見などを準備しておく、というのが法的な基本です。
    実家を売る目的が決まっているなら、早めに司法書士や弁護士へ相談しておくのが現実的です。

    お母様が認知症になったからといって、必ず実家を売却できなくなるわけではありません。

    ただし、不動産を売却するには、
    売主本人が「この不動産を売る」という契約の意味や内容を理解して判断できることが重要です。

    そのため、認知症が進行して判断能力が十分でない状態になると、
    お母様本人が売主として売買契約をすることが難しくなります。

    ここでよくある誤解が、「子どもだから、母親の代わりに売ればいい」というものです。

    これは基本的にはできません。

    不動産の所有者がお母様であれば、子どもが勝手に売却することはできません。
    委任状を用意すれば何でもできるというものでもなく、
    その委任自体がお母様の判断能力がある状態で適切に行われている必要があります。

    そこで、今の段階で検討しておきたいのが「任意後見制度」です。

    任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、
    あらかじめ後見人になってもらう人や、その人に任せる事務の内容を契約で決めておく制度です。

    将来、お母様の判断能力が低下した場合には、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、
    任意後見人による財産管理などが始まります。

    ただし、任意後見人になったからといって、実家を自由に売却できるという意味ではありません。

    特に、お母様が住んでいる自宅を売却する場合には、
    本人の生活や利益を守る必要がありますので、
    本人にとって本当に必要な売却なのかという点が重要になります。

    ですから、
    「将来施設に入ることになったら実家を売って、その費用を施設入居費などに充てたい」
    という考えがあるのであれば、その目的まで含めて、
    元気なうちに司法書士や弁護士などの専門家に相談しておくのがいいと思います。

    また、もう一つ大切なのが、認知症の診断を受けているかどうかだけで判断しないことです。
    「まだ診断されていないから契約できる」
    「認知症と診断されたから契約できない」
    という単純な線引きではありません。

    重要なのは、その時点で本人に契約の内容を理解して判断する能力があるかどうかです。

    そのため、最近「ちょっとあれ?」と思うことが増えているのであれば、
    まだ判断能力が十分あるうちに準備を進めておくことには意味があります。

    具体的には、
    ・お母様自身が将来どうしたいのかを確認する
    ・実家を売却する可能性があることについて家族で話しておく
    ・任意後見制度について司法書士や弁護士に相談する
    ・必要であれば任意後見契約を公正証書で作成する
    ・施設入居費など、売却代金を何に使うのかも整理しておく
    ・兄弟姉妹がいる場合は、将来の財産管理について共有しておく
    といった準備をしておくといいでしょう。

    なお、判断能力がすでに低下してしまい、
    任意後見契約を結ぶことが難しい状態になった場合には、
    法定後見制度を利用する方法があります。

    ただし、法定後見は家庭裁判所が関与する制度であり、
    本人の財産を家族が自由に処分できるようになる制度ではありません。

    特に居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要になる場合がありますので、
    「認知症になってから後見人を付ければ簡単に売れる」と考えない方がいいです。

    今回のように
    「将来、施設に入ることになったら実家を売る」
    という方向性がある程度決まっているのであれば、
    私は今の段階で動いておくことをお勧めします。

    不動産会社に売却相談をすることももちろん大切ですが、
    今回の問題の中心は「いくらで売れるか」よりも、
    「お母様の判断能力が低下した後に、誰がどのような権限で不動産を管理・売却できるのか」
    という法律上の問題です。

    そのため、まずは司法書士や弁護士に相談して、
    任意後見などを含めた財産管理の方法を決めておく。
    その上で、売却する時期が来たら不動産会社に査定や売却方法を相談する、
    という順番がいいと思います。

    お母様が元気なうちに「売る・売らない」を決める必要まではありません。

    ただ、「もし判断能力が低下したら、誰がどうするのか」だけは、判断できるうちに決めておく。

    これが今回、一番大切な準備だと思います。

  • 私が回答します

    小川佳宏

    小川FP・行政書士事務所

    • 60代
    • 愛知県
    • 男性
    • 専門家
    投稿日
    2026/09/09

    ご相談内容を拝見しました。お母様に最近、認知症の疑いがでてきて将来、自宅を売却したいがどうすればよいのかというお悩みですね。

    制度としては、移行型の任意後見制度と家族信託、その他の目的まで考慮するなら、その併用が考えられます。これらは契約行為ですのでいずれの場合も、お母さまに契約時点での判断能力があることが大前提です。

    お母がいつ頃売却したいのかによりますが、本人が意思能力がある間は、移行型として財産管理委任契約の中でご自分で売却することができます。その後、認知症と診断されると任意後見契約が発動されます。これは家庭裁判所に任意後見監督人の選任申し立てをすることにより開始されます。つまり、裁判所の管轄になり、任意後見契約が開始したら必ず売却できるかは不明で、金融資産がたくさんあれば、まずは金融資産から介護費用に回すように言われるリスクもあります。また、費用は例えば相談者様は任意後見人にすれば無報酬でもよいですが、監督人には一生、毎月の費用が2~3万円はかかります。監督人が選任されるまでも数か月かかると言われていますので、スピーディーは少しありません。

    一方、家族信託は別の制度で、今回の目的だけであれば家族信託が良いとも言えます。相談者様は受任者になって、いつでも自宅を売却することができますし、裁判所の管轄はありません。受任者も無報酬でもよいですが、最初の契約を公正証書で作成する際に、費用が数十万円かかりますがラニング費用はかかりません。ただし、信託に入れない預貯金や年金の引き出しや行政手続、介護契約などを広く考えると任意後見との併用の方が安心かもしれません。特定銀行の預金凍結を防ぐためだけなら、銀行の代理人予約サービスも検討に値します。

    いずれにしろ、契約能力がある間しかすべての対応ができなくなりますので、今、動かれる方がよいと思われる状況です。

    以降ご参考まで

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