不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/06

    この相談で一番伝えたいのは、
    「伐採するのが常識か、買主がやるのが常識か」という話ではないと思います。
    そこを「常識・非常識」で決めてしまうと、不動産の交渉そのものを取り違えてしまいます。

    金子さんの考え方を軸にしつつ、
    「ただし売主に一方的な義務があるわけではない」という点を整理すると、
    こういう回答が一番実務的だと思います。

    「買主が引き渡し後に伐採するのが常識ではないでしょうか」という考え方も分かります。

    ただ、不動産の売買交渉では、
    こうした話を「どちらがやるのが常識か」で考えない方がいいと思います。

    今回の「契約前にシンボルツリーを伐採してほしい」という要望は、
    あくまで買主側から出された購入条件の一つです。

    売主に伐採する義務があるわけでもありませんし、
    反対に買主が引き渡し後に自分で伐採しなければならないという
    決まりがあるわけでもありません。

    要するに、これが不動産取引における「交渉」です。

    買主は「この木がある状態では日当たりが気になるので、
    伐採してもらえるなら購入したい」と希望する。

    売主は
    「50年以上育ててきた木なので残したい」「伐採費用まで負担するつもりはない」と考える。

    その両方の希望を出した上で、最終的に条件が折り合うかどうかです。

    例えば、売主が伐採費用数十万円を負担してでも売りたいと思えば、
    伐採してから売るという選択もできます。

    「そこまで費用をかけるくらいなら、この条件では売らない」と思うのであれば、
    断って構いません。

    逆に買主も、「木を残すなら買わない」と判断できます。

    どちらが正しい、どちらが非常識という話ではありません。

    不動産は、売主が「売りたい価格・条件」と買主が「買いたい価格・条件」を出し合って、
    その条件で双方が納得できるかどうかで契約が決まります。

    ですから、今回のケースで売主側がまず考えるべきなのは、「伐採するのが常識か」ではなく、
    「この買主の希望を受け入れてでも、この人に売りたいか」だと思います。

    例えば、伐採費用が30万円だったとして、
    「30万円負担してでも、この買主に買ってもらえるならやろう」
    という判断なら、それも立派な交渉です。

    一方で、
    「数十万円もかけて木を切ってまで売るつもりはない」
    というのであれば、
    「申し訳ありませんが、伐採は考えていません」
    と伝えればいいだけです。

    場合によっては、
    「伐採費用の一部を買主にも負担してもらう」
    「売買価格を調整する」
    「契約後に買主負担で伐採する」など、
    間を取る方法もあります。

    ただし、ここで大切なのは、条件を曖昧なままにしないことです。

    例えば「契約したら切ります」という約束をするのであれば、誰が業者を手配するのか、
    費用はいくらまでなのか、いつまでに伐採するのか、
    切った木の処分は誰がするのかなどを明確にして、
    契約条件としてきちんと決めておく必要があります。

    また、
    樹齢50年を超える大きな木であれば、単純に「木を切るだけ」と考えない方がいいでしょう。
    伐採方法によっては重機や高所作業が必要になったり、
    隣地や建物、電線などへの影響が出たりする可能性もあります。
    実際に売主が負担するのであれば、先に伐採業者から見積もりを取っておくべきです。

    そして、今回もう一つ大切なのは、「伐採してほしい」という買主の要望を、
    単なるわがままと決めつけないことです。

    買主からすれば、50年間育った立派な木であっても、
    自分がこれから住む家の日当たりを悪くする要因になるのであれば、気になるのは当然です。

    売主にとっての「大切なシンボルツリー」と、買主にとっての「日当たりを妨げる木」は、
    どちらも間違いではありません。

    だからこそ、交渉になります。

    不動産売買では、
    「売主だからここまではやらなければならない」
    「買主ならここまでは我慢するのが普通」
    という線引きだけで話をしてしまうと、まとまる話もまとまりません。

    売主には売らない自由がありますし、買主には買わない自由があります。

    最終的には、
    「この条件なら売る」
    「この条件なら買う」
    という双方の判断だけです。

    今回であれば、まず伐採費用を正確に確認して、
    その金額を見た上で「そこまで負担しても売却したいのか」を考えればいいと思います。

    負担してもいいなら交渉すればいい。
    負担したくないなら断ればいい。
    価格との調整ができるなら、それも交渉すればいい。

    これが不動産取引の現実です。

    「買主が引き渡し後に伐採するのが常識」と決めてしまう必要もありませんし、
    「買主が希望したのだから売主が伐採するのが当然」と考える必要もありません。

    売主が譲れない条件を持つのと同じように、買主にも譲れない条件があります。

    その条件をお互いに出し合い、どこまでなら譲れるのかを探るのが交渉です。

    そして、どうしても条件が合わなければ、売らなければいい、買わなければいい。

    不動産の売買は、最終的にはそこに尽きると思います。

    「常識だからこうする」ではなく、「この条件で自分は売るのか、買うのか」。

    その判断をするのが、売主と買主それぞれの自由であり、不動産取引そのものだと思います。

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