不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/07

    このケースは、相談者の「もうこの業者では無理なのでは」という気持ちはかなり理解できます。
    契約前からミスや報告の遅れが続き、
    しかも契約で9月3日までと明確に決めた登記を失念していたのであれば、
    少なくとも実務上はかなり問題のある対応です。

    ただ、ここは「腹が立つから解除できる」という話にはせず、契約書に沿って売主に履行を求め、
    必要なら解除まで進められる状態を作る、という回答が一番正確です。
    民法541条も、相当期間を定めて催告し、その期間内に履行されなければ解除できる一方、
    違反が軽微なら解除できないとしています。

    また、増築によって床面積などが変わる場合は建物表題部変更登記が必要になることがあります。
    東京土地家屋調査士会も、増築の場合は建物表題部変更登記が必要と案内しています。

    相談者が「できれば購入したい」という気持ちも残っている前提なら、
    いきなり内容証明で解除を叫ぶより、
    まず売主に「契約で約束したことを、いつまでに確実に履行するのか」
    を正式に回答させるのが得策だと思います。

    ご心配になるのは当然だと思います。

    契約前から間違いが多かったり、報告が遅かったりして、
    そこに今回「9月3日までに増築部分の登記をする」と契約書で約束していたにもかかわらず、
    期日を過ぎても登記されていないとなると、
    「この会社に任せて本当に大丈夫なのか」と思ってしまいますよね。

    しかも、こちらから問い合わせて初めて「まだ登記していません」と分かったのであれば、
    少なくとも実務上はかなり心配な対応だと思います。

    ただ、法律的には少し整理して考えた方がいいです。

    まず、契約違反なのかを確認する。
    今回一番重要なのは、
    「増築部分を9月3日までに登記する」という約束が売買契約書に明確に記載されていることです。

    単なる担当者の口約束ではなく、契約書上の売主の義務として記載されているのであれば、
    売主にはその義務を履行する責任があります。

    増築によって床面積などに変更が生じている場合、
    建物表題部変更登記が必要になるケースがあります。

    したがって、今回の問題は「不動産会社が忘れていた」というだけではなく、
    まず契約当事者である売主が、
    契約上の義務を期日までに履行していないという問題として考えるべきです。

    ここは非常に大事です。
    ① 契約違反を理由に解除できるのか
    「9月3日を過ぎたから、今日から契約解除できます」と単純にはなりません。

    今回の契約書には、
    「債務の履行を遅滞したとき相当の期間を定めて債務の履行を催促した上で、
    その期間に債務の履行がないときは本契約を解除することができます」
    とあるとのことです。

    つまり、まず売主に対して履行を求め、相当の期間を設定する。
    それでも履行されなければ、解除を検討するという流れです。

    ただし、ここで「登記が遅れたから必ず解除できる」とも言い切れません。

    債務不履行が契約や取引上の社会通念に照らして
    軽微な場合には解除できないという例外があります。

    今回の増築登記がどの程度重要なのか、登記がされないことで決済や所有権移転、融資、
    将来の売却などにどのような影響が出るのかによって判断は変わります。

    ですから、「軽微だから何もできない」と考える必要もありませんし、
    「期日を過ぎたから当然解除」と考えるのも早いです。

    私なら、まず解除より「確実に履行させる」ことを考えます。

    相談者が本当はこの家を購入したいのであれば、
    ここでいきなり解除を目的に動く必要はないと思います。

    むしろ、
    「契約書で9月3日までに履行すると定めた増築部分の登記が、現在も完了していません。
    いつまでに、誰が、どのような段取りで完了させるのか、売主として明確に回答してください」
    という形で、売主側に正式な回答を求めるのがいいと思います。

    そして、土地家屋調査士にも、
    「現在どこまで進んでいるのか」
    「必要書類は揃っているのか」
    「いつ申請できるのか」
    「登記完了はいつ頃になるのか」
    を確認します。

    ここまで確認すれば、
    「単に担当者が忘れていただけなのか」
    「売主側の書類不足なのか」
    「そもそも登記自体に問題があるのか」も見えてきます。

    ② 違約金はいくらなのか
    ここは「9月3日を過ぎたから○万円」という決まり方ではありません。

    違約金について契約書に定めがあるのであれば、まずその条項が基準になります。

    一方、契約書に今回の登記遅延についての具体的な違約金の定めがなければ、
    勝手に金額を決めて請求できるわけではありません。

    実際に損害が発生しているのであれば、債務不履行による損害賠償を検討する余地はありますが、
    その場合は「何が原因で、いくらの損害が発生したのか」という整理が必要です。

    ですから、今回については「違約金をいくら請求するか」よりも、
    まず契約書の違約金条項を確認することが先です。

    ③ 不動産会社に違約金を請求できるのか
    ここも注意が必要です。

    売買契約の当事者が「売主と買主」であれば、
    増築登記をする義務を負っているのは基本的に売主です。

    仲介会社は売買契約そのものの当事者ではありません。

    そのため、
    「売主が登記をしなかったから、仲介会社に契約上の違約金を払わせる」
    という単純な話にはなりません。

    ただし、不動産会社に媒介業務上の義務違反や故意・過失があり、
    そのことによって具体的な損害が発生したのであれば、
    別途、損害賠償責任が問題になる可能性はあります。

    国土交通省も、
    媒介契約は売主・買主と宅地建物取引業者との間で結ばれるものとして整理しています。
    つまり、売買契約と媒介契約は別の契約関係です。

    今回のように「忘れていました」「報告していませんでした」
    という対応が何度も続いているのであれば、
    会社としてどのような管理をしていたのかは確認していいと思います。

    ただ、怒りの矛先を仲介会社に向けるより、
    まず「売主に契約上の義務を履行させる」ことが一番重要です。

    ④ 内容証明の猶予期間は2日でいいのか
    ここも「2日なら有効」というような決まりはありません。

    重要なのは、相手に履行するための「相当の期間」を与えたかどうかです。

    2日で十分な場合も絶対にないとは言えませんが、今回のような登記手続きについて、
    単純に「2日以内に登記を完了してください」と設定するのは、私はおすすめしません。

    登記には土地家屋調査士の調査や必要書類の準備、申請などが絡みます。

    そのため、「2日以内に登記完了」ではなく、
    「○日までに登記申請を行い、その進捗及び完了予定日を回答してください」
    というように、実際の手続きに即した要求をする方が現実的です。

    もちろん、すでに9月3日を過ぎている以上、のんびり待つ必要もありません。

    「相当期間」というのは、相手にいつまでも待ってあげるという意味ではありません。

    今回、私ならこう動きます。
    まず契約書の「9月3日までに登記する」という条項と、違約・解除に関する条項を正確に確認します。

    そのうえで、仲介会社だけに話をさせず、
    「売主として、増築部分の登記をいつまでに履行するのか」を明確に回答してもらいます。

    同時に、土地家屋調査士へ直接確認し、現在の進捗と必要書類、
    登記申請及び完了までの見込みを確認します。

    そこで具体的なスケジュールが出てくれば、まずは履行を待つ。

    逆に、
    「まだ何もしていない」
    「いつできるか分からない」
    「売主も忘れていた」
    「これから考えます」
    という状態であれば、話は変わってきます。

    契約書に明記された義務を期日までに履行せず、
    その後も具体的な履行予定すら示さないのであれば、買主として正式に催告し、
    それでも履行されない場合には契約解除を含めて対応を検討する余地があります。

    私が一番気になるのは「登記が遅れたこと」だけではありません。

    正直、今回の話で私が一番気になるのは、9月3日に登記できなかったことそのものより、
    「契約で決めたことを忘れていたこと」
    「買主から聞かれるまで報告していなかったこと」
    「これまでにも間違いや報告遅れがあったこと」
    です。

    不動産の売買では、多少の行き違いが起こることはあります。

    でも、契約書に書いてあることを誰が、いつまでに、どう履行するのかを管理するのは、
    取引を安全に進めるうえで非常に大切な仕事です。

    今回の件も、増築登記だけを見れば「少し遅れているだけ」と言われる可能性はあります。

    しかし、その裏側に別の問題がないかは確認した方がいいと思います。

    例えば、増築部分について建築確認上の問題がないのか。

    登記できない事情があるのではないか。

    私道の実測、境界確定、通行・掘削承諾と同じ土地家屋調査士に依頼していることで、
    単純に後回しになっているだけなのか。

    こういうところまで確認して初めて、本当に「単なる遅れ」なのか判断できます。

    購入したい気持ちがあるなら、
    今は「解除するため」ではなく「解除できる状態を作るため」に動く

    ここが一番大事だと思います。

    本当に欲しい家なのであれば、最初から解除を目的にする必要はありません。

    まずは契約通りにやってもらう。

    そのために正式に催告する。

    いつまでに何をするのか明確にさせる。

    それでも約束を守らないのであれば、その時点で契約解除や損害賠償を含めて次の判断をする。

    この順番です。

    逆に、今回の対応を見て「もうこの会社には任せられない」と感じているのであれば、
    その感覚も無視しない方がいいと思います。

    不動産の取引は、契約して終わりではなく、決済・引渡しまで続きます。

    今後、境界や私道、通行・掘削承諾など、
    まだ確認することが残っているのであれば、なおさらです。

    今の段階で「誰が、いつまでに、何をするのか」をはっきりさせておく。

    それでも対応が改善されないのであれば、仲介会社の上席や本社への相談、
    必要に応じて宅建業者の監督行政庁や弁護士への相談も視野に入れていいと思います。

    ただ、まずは感情的に「契約違反だから解除します」と動くより、
    契約書を根拠に淡々と履行を求める。

    その結果を見て、購入を続けるのか、解除を検討するのかを判断する。

    今の段階では、それが一番相談者の希望を残しながら、損をしない進め方だと思います。

    このケースは、
    相談者が「できればこの家を買いたい」のか「もうこの業者との取引自体をやめたい」のかで、
    最終的な戦略がかなり変わります。
    ただ、どちらにしても、9月3日の約束を曖昧なまま流さないことが最優先です。

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