不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/21

    このケースは、住宅ローン控除を考えて「せっかく親からもらった1,800万円を頭金に入れず、
    フルローンにした方が得なのでは」と考えたくなるところですが、税法上は少し注意が必要です。

    結論からいうと、私は1,800万円の援助をきちんと住宅購入資金として使い、
    残りの4,400万円程度を住宅ローンにする考え方を基本にします。

    一番大事なのは、贈与税の特例と住宅ローン控除を別々に考えないことです。

    令和8年中に父母などから住宅取得資金の贈与を受ける場合、一定の要件を満たせば、
    省エネ等住宅なら受贈者1人につき1,000万円、
    それ以外の住宅なら500万円まで非課税にできます。
    ただし、
    この制度は「住宅の取得のために贈与を受けたお金」
    を実際に住宅の取得対価に充てることが前提です。

    ここで今回かなり重要なのが、「誰が誰から贈与を受けるのか」です。

    ご主人のご両親からの1,000万円はご主人への贈与、
    奥様のご両親からの800万円は奥様への贈与です。

    したがって、夫婦でマンションを共有するのであれば、
    原則としてその資金負担とマンションの持分も整合させておく必要があります。

    例えばご主人が1,000万円、奥様が800万円を負担し、
    それ以外を夫婦それぞれの住宅ローンで負担するのであれば、
    その負担割合をもとに持分を決めることになります。

    逆に、奥様がご両親からもらった800万円を、
    実質的にご主人の持分の購入資金として使ってしまうと、
    夫婦間の贈与という別の問題が出てきます。
    ここは「親からもらったお金だから、夫婦の頭金として自由に使えばいい」
    と考えない方がいいところです。

    そして、
    ご質問の「フルローンにして住宅ローン控除を最大限受けた方が得ではないか」という点ですが、
    ここも単純にはそうなりません。

    住宅取得等資金の贈与について非課税の特例を使った場合、
    その贈与額は住宅ローン控除の計算上、住宅の取得対価から差し引くことになっています。
    つまり、
    6,200万円の中古マンションについて1,800万円の住宅取得資金の贈与を受けて適用するなら、
    住宅ローン控除の対象となる取得対価は、基本的には4,400万円を基準に考えることになります。

    ですから、
    「6,200万円の物件を6,200万円のローンで買って、
    さらに親からもらった1,800万円を手元に残し、住宅ローン控除だけは6,200万円分受ける」
    という考え方にはなりません。

    そもそも6,200万円の物件に対して6,200万円をローンで支払ったうえで、
    親からの1,800万円を住宅取得資金として非課税にして手元に残す、
    ということ自体が住宅取得資金の特例の趣旨から外れてしまいます。

    今回であれば、まず6,200万円の購入資金のうち1,800万円を親からの援助で賄い、
    残り4,400万円を住宅ローンで調達するという形が非常に分かりやすいです。

    もちろん、
    住宅ローン控除だけを見れば「もっと借りて年末残高を増やした方が控除額も増えるのでは」
    と考えますが、住宅ローン控除は年末残高だけで無制限に計算できるわけではなく、
    住宅の種類による借入限度額などもあります。
    令和8年以降に入居する中古住宅についても、
    住宅の性能などによって控除期間や借入限度額が異なります。

    それに、住宅ローン控除は「借金を多く残すほど得をする制度」ではありません。

    例えば仮に、余分に1,000万円を借りて、
    その部分について0.7%の住宅ローン控除を満額受けられたとしても、
    単純計算で年間7万円程度の控除です。

    一方、その1,000万円を借りれば当然利息を払います。

    住宅ローンの金利が上がればその差はもっと大きくなりますし、
    そもそも住宅ローン控除には所得税・住民税から控除できる金額の上限もあります。

    ですから、
    「控除を受けたいから借金を増やす」という逆転した考え方は、私はあまりお勧めしません。

    今回の1,800万円については、親御さんからせっかく援助していただけるのであれば、
    それを住宅購入にきちんと充てて、
    住宅ローンを4,400万円程度まで抑える方が家計としては分かりやすく、安心感もあります。

    ただし、ここには一つ確認しておきたいことがあります。

    中古マンションが「省エネ等住宅」に該当するのかどうかです。

    令和8年中の住宅取得資金贈与については、省エネ等住宅なら受贈者1人につき1,000万円、
    それ以外なら500万円が非課税限度額です。

    今回、ご主人がご両親から1,000万円を受け取るのであれば、
    ご主人側はそのマンションが省エネ等住宅の要件を満たすかどうかがかなり重要です。

    一方、奥様のご両親からの800万円については、奥様が受贈者になるため、
    奥様自身の住宅取得資金贈与として非課税制度を利用できるかを確認する必要があります。

    ここで「夫の親1,000万円+妻の親800万円だから、夫婦で合計1,800万円まで非課税」
    と単純に考えるのも危険です。
    住宅取得資金の非課税限度額は、贈与者ごとに無制限に認められるものではなく、
    受贈者ごとの限度額があります。

    したがって、
    今回のケースでは「6,200万円の物件だから頭金はいくらが一番得か」という計算より先に、
    ご主人が1,000万円、奥様が800万円の贈与をそれぞれ受けること
    その贈与を実際の住宅取得資金に充てること
    その負担割合とマンションの持分を合わせること
    それぞれの贈与について非課税制度を利用できるか確認すること
    ここをきちんと決めるのが先です。
    そのうえで残りを住宅ローンにする。

    私なら、住宅ローン控除を最大限取ることよりも、親からの援助を使って借入額を抑え、
    毎月の返済を軽くすることを優先します。

    住宅ローン控除はあくまで税金の還付・控除です。
    1,800万円の借金を残してまで取りに行くものではありません。

    特に今回のように6,200万円の中古マンションに対して1,800万円もの援助があるのであれば、
    そのメリットはかなり大きいです。
    税金の控除額だけを見て借入額を増やすより、4,400万円前後まで借入額を抑えて、
    その後の生活に余裕を残す方が実務的には分かりやすいと思います。

    ただ、最終的な持分については、
    夫婦それぞれが実際にいくら負担するのかを確定してから決めてください。
    ここを曖昧にすると、住宅ローン控除以前に贈与税の問題が出てくる可能性があります。

    なお、住宅取得等資金の非課税特例を使う場合は、非課税額がゼロになるわけではなくても、
    特例を適用するための贈与税申告が必要です。
    贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに申告することになります。

    今回のケースは、「フルローンか頭金1,800万円か」という二択で考えるより、
    まず夫婦それぞれの贈与額とローン負担、マンションの持分を一致させ、
    そのうえで住宅ローン控除がどこまで使えるかを見る。
    この順番で考えるのが一番安全だと思います。

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