不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/08/08

    このケースは、まず「兄に相続する権利があるか」ではなく、
    遺言の内容が有効で、兄に遺留分があるのかを切り分けるのが大事です。

    兄が生活費を仕送りしていたからといって、
    それだけでマンションの共有持分が発生するわけではありません。
    ここはかなり明確にしてよいと思います。

    一方で、兄が法定相続人であれば、遺言でマンションを全部あなたに相続させる内容でも、
    一定の範囲で遺留分の問題が出てくる可能性があります。
    ここを「遺言があるから兄には一切権利がない」と考えてしまうのは危険です。

    売却を急ぐより、まず相続登記と遺留分の確認をして、
    兄との権利関係を整理してから売却することを勧めます。

    今回の話は、「遺言書があるから全部あなたのものなので、兄の同意は一切いらない」
    と単純に考えない方がいいと思います。

    ただ、逆に「お兄さんが仕送りをしていたから、マンションにも権利がある」
    という話でもありません。

    ここは分けて考えた方がいいです。

    まず、遺言書に「このマンションをあなたに相続させる」と明確に書かれていて、
    その遺言が有効なものであれば、
    原則としてマンションはその遺言に従ってあなたが取得することになります。

    お兄さんが過去にお母様へ仕送りをしていたことだけで、
    マンションの共有持分や所有権が発生するわけではありません。

    「母の生活費を自分も出していた」という事情と、
    「そのマンションを相続する権利がある」という話は別です。

    ただし、ここで重要なのが「遺留分」です。

    お兄さんがお母様の子であれば、通常は法定相続人です。

    遺言によってマンションをあなた一人に相続させること自体は可能ですが、
    一定の法定相続人には遺留分という最低限の取り分が認められています。

    そのため、
    「遺言書がある」=「お兄さんには何の権利もない」
    とは限りません。

    ここは注意してください。

    もっとも、遺留分があるからといって、
    お兄さんがマンションの共有者になるわけでもありません。

    現在の制度では、遺留分を侵害された場合の基本的な権利は、
    財産そのものを取り戻すというより、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利です。

    つまり、遺言どおりマンションをあなたが取得し、そのマンションを売却すること自体と、
    お兄さんの遺留分の問題は別の話として考える必要があります。

    ここは昔の「遺留分を取り戻されて共有になる」というイメージとは少し違います。

    ただ、
    だからといって「兄の同意は絶対に不要」と決めつけて売却を進めるのもおすすめしません。

    なぜなら、実際には遺言書の種類や内容、相続人が誰なのか、
    マンション以外の遺産がどのくらいあるのかによって、遺留分の計算が変わるからです。

    例えば、お母様の相続人があなたとお兄さんの2人だけだった場合、
    一般論としてお兄さんの遺留分は、法定相続分の2分の1が基本になります。

    この場合、法定相続分が2分の1なので、遺産全体に対する遺留分は4分の1という計算になります。

    ただし、これはマンション価格だけを見て決めるものではありません。

    預貯金やその他の不動産、負債なども含めて相続財産全体を確認する必要があります。

    例えばマンションが3,000万円、預貯金が2,000万円あるケースと、
    マンション3,000万円しかほとんど財産がないケースでは、遺留分の問題の見え方も変わります。

    また、過去の仕送りについても、
    単純に「兄が500万円出したから500万円分の相続権がある」という話にはなりません。

    そのお金が生活費として渡されたものなのか、貸したものなのか、贈与だったのか、
    何か別の合意があったのかによって意味が変わります。

    お兄さんが
    「自分も母の生活費を出していたからマンションに権利がある」と主張しているのであれば、
    まず「その権利の根拠は何なのか」を確認した方がいいです。

    仕送りをしていたという事実だけで、マンションの所有権や持分が発生するわけではありません。

    そして、売却する側からすると、もう一つ大事なのが相続登記です。

    遺言書の内容に従ってあなたがマンションを取得するのであれば、
    まずその内容に基づいて相続登記を行い、誰が所有者なのかを明確にしておくことが重要です。

    所有権があなたに移ったことが登記上も明確になれば、通常の売却手続きを進めやすくなります。

    ただし、兄が遺言の有効性そのものを争っている場合や、
    遺言書の内容に問題がある場合は話が変わります。

    例えば、「この遺言書は母が本当に作ったものなのか」「作成当時、母に遺言能力があったのか」
    「自筆証書遺言なら法律上必要な要件を満たしているのか」など、
    遺言そのものの有効性を争われるケースです。

    ここまで来ると、不動産会社だけで判断する話ではありません。

    私なら、今回の状況で売却を急ぐ前に、遺言書の原本を確認する。

    相続人を確定する。

    マンション以外の相続財産も把握する。

    遺言書に基づいて相続登記が可能か確認する。

    そして、お兄さんが主張している「自分の権利」が、所有権なのか、遺留分なのか、
    仕送りに関する別の請求なのかを明確にします。

    この順番で整理します。

    特に、「兄の同意が必要なのか」という質問については、
    お兄さんが単に法定相続人だからという理由だけで、
    あなたが遺言によって取得したマンションの売却に必ず同意しなければならない、
    とは限りません。

    一方で、お兄さんが遺言の有効性を争っている、遺留分について具体的な請求をしている、
    あるいは相続人間で遺産分割が必要な状態になっているのであれば、話は変わってきます。

    ここを確認せずに「遺言があるから大丈夫」と売却を進めるのはおすすめしません。

    不動産の売却だけを見ると、「所有者が誰なのか」が一番大事です。

    でも相続の場合は、
    その前段階に「本当にその人が単独で所有権を取得できているのか」という問題があります。

    ここをきちんと整理してから売却した方が、買主側にも説明しやすいですし、
    売却途中で兄弟間の問題が表面化して取引が止まるリスクも減らせます。

    お母様の近くで介護や生活の面倒を見てきたあなたからすると、
    「自分はこれだけやってきたのに、遠方にいた兄から権利を主張されるのは納得できない」
    というお気持ちは当然あると思います。

    ただ、相続は「誰がどれだけ面倒を見たか」という感情だけで決めるものでもありません。

    だからこそ、
    そこは一度感情から切り離して、遺言書と法律上の権利関係で整理した方がいいと思います。

    私なら、
    兄弟で感情的に話し合いを続けるより、遺言書と相続財産を一度専門家に見てもらいます。

    そこで「お兄さんに遺留分がどの程度あるのか」
    「マンションの売却について本当に同意が必要なのか」
    「売却後に遺留分の請求を受ける可能性があるのか」を明確にしてもらう。

    その上で、お兄さんにも数字を見せて話した方が早いと思います。

    不動産は売ってしまうと取り返しがつきません。

    今回のように兄弟間で既に意見が食い違っているのであれば、「たぶん大丈夫」で売却するより、
    売る前に権利関係をきれいにしておく。

    これが結果的には一番安全だと思います。

  • 私が回答します

    投稿日
    2026/08/09

    ご相談を拝見しました。

    法的に有効な遺言書があれば、他の相続人の同意を得ず相談者様単独で所有権移転登記を行うこと自体は可能です。そして、所有権移転を完了すれば、単独で売却することも問題ありません。

    ただし、お兄様には、遺留分侵害請求をする権利が認められます。もっとも、現在の法律(2019年7月以降)において遺留分の請求は、「不動産の共有持ち分」を求めるものではなく、「金銭(現金)」で支払うよう求める権利に変更されています。したがって、お兄様が遺留分を主張したとしても、マンション売却そのものを止める権利はありません。

    結論としては、相続したマンションの売却についてはお兄様の同意は不要である蓋然性が高い一方で、遺言書の検認や登記手続きは司法書士に、お兄様との遺留分やトラブルの協議・交渉は弁護士に相談されるのが問題を拗らせない方法だと思われます。

  • 私が回答します

    小川佳宏

    小川FP・行政書士事務所

    • 60代
    • 愛知県
    • 男性
    • 専門家
    投稿日
    2026/08/09

    ご相談内容を拝見しました。お母様がお亡くなりになり、遺言書にマンションは相談者様に相続させると記載があるのに、お兄様が仕送りをしていたので権利があると主張されているのですね。

    まず、遺言書が法的に有効である前提ですと、お兄様が仕送りをしているだけでは、通常、いわゆる「寄与分」は認められません。マンションを相談者様に「相続させる」と記載されていれば、法律上「特定財産承継遺言」と呼ばれるものにあたります。この種の遺言がある場合、お母様が亡くなった時点で、そのマンションは自動的に相談者様の単独所有物になります。相談者様だけで相続登記をして売却手続をすることができます。

    ただし、お兄様には遺留分がありますので、お母様の財産の1/4をお兄様は相談者様に金銭で請求する権利があり、これは相談者様の義務となります。遺留分は、決してお兄様がマンションの売却を止めたり、売却に同意しなければならないという権利ではありません。遺言書全体の内容が不明ですが、ここは確認をしてください。

    逆に、相談者が近くに住み、通院や買い物を継続的に手伝っていたことも、内容や負担の程度によっては、「寄与分」として主張できる可能性があります。ただし、親族として通常期待される範囲の介護や援助だけでは、寄与分として認められないことの方が多いでしょう。

    まずは、専門家に入ってもらい、法律的な説明をしてもらい、お兄様に理解してもらうことに努めるとよいと思われます。

    以上ご参考まで。

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