不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/08/30

    母様を住まわせたまま、実家をリースバックすること自体は可能です。
    ただ、今回のケースでは、私はかなり慎重に考えた方がいいと思います。

    リースバックは
    「家を売って現金を受け取り、その後は家賃を払って住み続ける」という仕組みです。
    国土交通省も、住み替えや建て替えなど一定の目的がある場合には有効な選択肢としています。

    ただし、
    今回のように「母様の生活費が厳しいから、家を現金化して住み続けたい」という目的なら、
    売却代金とその後の家賃を一度きちんと比較した方がいいです。

    例えば、1,500万円で売却できて、家賃が月8万円なら年間96万円です。
    単純計算でも約15年で1,440万円になります。
    もちろん実際には固定資産税や修繕費など、
    所有していた場合にかかる費用もありますので単純比較はできませんが、
    「売って1,500万円手に入ったから安心」とだけ考えるのは危険です。

    しかも、リースバックでは所有権が母様から事業者に移ります。
    その後は母様は「所有者」ではなく「賃借人」です。
    普通借家なのか定期借家なのか、
    契約期間、更新の条件、家賃の改定、修繕費の負担などは契約によって変わります。
    定期借家であれば、契約期間が終わった際に更新されない可能性もあります。

    さらに、売却後にその不動産が別の事業者へ転売され、
    家賃や契約条件について新しい所有者との間で問題になるケースも指摘されています。
    国民生活センターにも、家賃の値上げによって住み続けることが難しくなった相談があります。

    ですから、「母を住まわせたまま現金化できる」という部分だけで決めるのはおすすめしません。

    私自身なら、今回のケースではまず通常の売却価格を調べます。

    例えば、
    「普通に売ったらいくらになるのか」
    「リースバックならいくらで買い取るのか」
    「その場合の家賃はいくらなのか」
    「何年間住み続ける想定なのか」
    「その間に家賃が上がる可能性はあるのか」
    「母が亡くなった場合や施設に入る場合、契約はどうなるのか」
    ここまで並べて比較します。

    特に、母様が今後何年くらいその家に住む予定なのかは非常に重要です。
    5年程度なのか、10年、15年なのかによって、リースバックの意味はかなり変わります。

    もし「母はできるだけ長く今の家に住みたい」という話なのであれば、
    私はリースバックだけを最初から前提にせず、通常売却、賃貸への住み替え、
    子どもが一部支援する方法なども含めて比較します。

    リースバックは悪い仕組みということではありません。
    ただ、「住み続けられる代わりに所有権を手放し、今後は家賃を払い続ける」という取引です。
    消費者庁も、
    住み替える意向がないのであれば安易に所有権を手放さないよう注意喚起しています。

    そして、私は「家を売ってお金を作る」ことより、
    「母様がこの先安心して暮らせる状態をどう作るか」を先に考えた方がいいと思います。

    その結果としてリースバックが一番良いのであれば、それを選べばいいですし、
    通常売却して別の住まいに移った方が生活が安定するのであれば、そちらを選ぶべきです。

    売却価格だけで判断せず、売却後に毎月いくら必要になるのか、
    母様の年金や仕送りを含めて何年続けられるのかまで計算してから決めることをおすすめします。

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