不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/08

    今回の話は、
    「買主がなぜ300万円足りないのか」という理由を突き詰めすぎない方がいいと思います。

    もちろん、買主が住宅ローンを満額借りられなかった理由を理解することは大切です。

    ただ、売主からすると、最終的に重要なのはそこではありません。

    「300万円下げてくれたら買える」という買主に対して、
    「では300万円下げて売るのか」
    「300万円は下げないのか」
    「100万円なら下げるのか」
    「150万円なら売るのか」を判断するだけです。

    買主が住宅ローンをいくら借りられるかは、基本的には買主側の事情です。

    今回、賃貸部分の面積割合が大きいため、
    一般的な居住用住宅ローンでは希望額まで借りられなかったということですが、
    それによって売主が300万円値下げしなければならないわけではありません。

    逆に、売主が「300万円下げても早く売れるなら、その方がいい」と判断するのであれば、
    それも当然ありです。

    不動産の価格交渉は、理由の正しさを競うものではありません。

    買主には「この金額なら買える」という予算がある。
    売主には「この金額なら売ってもいい」という価格がある。
    その二つが合えば契約になるし、合わなければ契約にならない。
    非常にシンプルな話です。

    ですから、
    「買主がローンを組めないのだから、売主が300万円負担するのが妥当なのか」
    と考えすぎなくていいと思います。

    それは売主が決めることです。

    では、投資用ローンを使える買主を探した方がいいのか。
    ここも、「投資用ローンだから一般の人には難しい」と一括りにはできません。

    賃貸併用住宅の場合、本人が住む部分と賃貸部分があるため、
    金融機関によって住宅ローンとして扱える範囲や融資条件が異なります。

    賃貸部分の割合、本人の居住部分、年収、自己資金、既存借入、賃貸収入、
    物件価格などによって、利用できるローンは変わります。

    したがって、今回の買主が住宅ローンで足りなかったからといって、
    「この物件は投資用ローンを使える人しか買えない」と決まったわけでもありません。

    一方で、投資用ローンを利用する買主を対象にすると、
    純粋な居住用住宅より購入層が限定される可能性はあります。

    その意味では、仲介担当者が「投資用ローンを使える買主を探す」という提案をしているのは、
    売却戦略としては一つの選択肢だと思います。

    ただ、ここでも「投資用ローンの買主を探すべき」という答えが先にあるわけではありません。

    売主が何を優先するかです。

    例えば、「300万円下げるくらいなら、多少時間がかかっても今の価格で探したい」のであれば、
    価格を維持して販売を続ければいい。

    反対に、「300万円下げても、今の買主との話をまとめられるなら、その方がいい」のであれば、
    価格交渉に応じればいい。

    「300万円は無理だけど100万円なら下げてもいい」という判断も当然あります。

    これが価格交渉です。

    そして、ここで一つ大事なのは、「300万円下げる」という金額だけで判断しないことです。

    例えば、現在の価格であと半年販売することになった場合、
    固定資産税、管理費、修繕費、ローン金利などの保有コストがどれくらいかかるのか。

    その間に価格を下げる可能性はないのか。
    今の買主を逃して、次の買主がいつ現れるのか。

    300万円値下げしてでも、今すぐ確実に売れることにどれだけ価値があるのか。
    ここまで考えて判断します。

    反対に、今の価格でも十分に市場性があり、問い合わせや内覧も入っていて、
    急いで売る必要もないのであれば、300万円を下げる理由はありません。

    今回のような物件は、単純な居住用不動産と違って、購入する人の目的が少し特殊です。

    自分で住みながら家賃収入を得たい人もいれば、将来的に自宅部分も賃貸にしたい人、
    投資目的で購入する人もいます。

    そのため、買主が一人現れて「300万円足りません」と言ったからといって、
    それがそのまま物件の適正価格を意味するわけではありません。

    ここは冷静に考えた方がいいです。

    今回の買主が300万円足りないというのは、
    「この買主は現在の条件では300万円足りない」というだけです。

    「この物件が300万円高い」とは限りません。
    ここを混同しないことが大切です。

    私なら、まず仲介会社に「今の買主が300万円下がれば購入できる」という話とは別に、
    この物件を現在の価格で購入する可能性のある買主がどの程度見込めるのかを聞きます。

    そして、投資用ローンを使う買主を含めた場合の市場性についても確認します。

    その情報を聞いた上で、自分が決めます。

    「300万円下げて今の買主に売る」のか、「価格を維持して次の買主を探す」のか。
    あるいは、「300万円は下げないが、○万円までなら下げる」のか。

    どれを選んでも間違いではありません。

    不動産の価格交渉に「正解の金額」があるわけではありません。

    売主がその金額で売ってもいいと思えるかどうかです。

    そして、買主にも「その金額なら買う」という判断があります。

    売主が300万円下げることを断った結果、買主が購入をやめる可能性もあります。

    それはそれで仕方ありません。

    逆に、300万円下げたことで売却できるのであれば、
    その300万円を「損した」と考える必要もありません。

    売主自身が「300万円払ってでも、このタイミングで売る」
    という判断をしたということだからです。

    結局、不動産売買は「どちらが正しいか」ではなく、「この条件で売るか、買うか」です。

    今回も、買主のローン事情に振り回されすぎる必要はありません。

    買主がなぜ300万円足りないのかを理解した上で、「自分は300万円下げても売りたいのか?」
    ここを考えればいいと思います。

    下げたくないなら下げない。
    300万円なら下げてもいいなら下げる。
    150万円ならいいと思うなら150万円まで交渉する。

    その判断は売主にしかできません。

    仲介業者の仕事は、「300万円下げましょう」と決めることではなく、
    市場の反応や他の購入候補、融資を含めた選択肢を伝えて、
    売主が判断できる材料を揃えることです。

    最終的に、いくらなら売るのかを決めるのは売主です。

    今回の300万円という金額も、「買主が困っているから仕方なく負担する」のではなく、
    「その条件を受け入れてでも、この買主に今売る価値が自分にあるのか」
    という視点で判断するのが、一番現実的だと思います。

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