不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/07/31

    お気持ちはよく分かります。

    ただ、この状況は急いでいるからこそ、ご家族だけで進めようとすると、
    かえって時間がかかってしまうケースが少なくありません。

    まず、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。お一人でも協議に参加しなかったり、
    合意が得られなかったりすると、原則として遺産分割協議書は成立しません。

    ご相談文を読んでいて一つ気になったのは、
    「実家を売って母の施設費に充てたい」という考え方自体は、とても自然だと思います。
    ただ、その使い道まで含めて弟さんにも同じ考えを求めてしまうと、
    話がまとまりにくくなることがあります。

    例えば、まずは法律上の相続手続きとして遺産分割をきちんと行い、
    その後、それぞれが受け取った財産をどう使うかは各自の判断という考え方もあります。

    もちろん、お母様の施設費をどう負担するかは別途話し合う必要がありますが、
    相続の手続きと、その後のお金の使い道は分けて考えた方が整理しやすいことも多いです。

    また、弟さんがなぜ協議に参加しないのか、その理由はご相談文だけでは分かりません。

    相続そのものに反対しているのか、実家を売ることに反対なのか、
    それとも手続きが面倒で動いていないだけなのかによって、対応は大きく変わります。

    もし話し合いができる状況であれば、「このまま何もしないと父名義の財産の手続きが進まず、
    結果としてお母様の施設費の支払いにも影響が出る可能性がある」という現実的な話を、
    感情ではなく事実として伝えてみることも大切だと思います。

    そして、少しでも相続人の方向性が違うのであれば、私は専門家に依頼することをおすすめします。

    「遺産分割協議書くらい自分たちで作れる」と思って始めても、実際には不動産の名義変更、
    相続登記、預貯金の解約、税金の確認など、想像以上に手続きが多く、
    ご家族だけで進めると途中で止まってしまうケースを何度も見てきました。

    相続は、一度こじれると解決まで何年もかかることがあります。だからこそ、
    早い段階で司法書士や弁護士などに間に入ってもらう方が、
    結果的にご家族の負担も少なくなることが多いです。

    相続は法律の知識だけではなく、ご家族それぞれの気持ちも関わる問題です。
    焦るお気持ちはあると思いますが、だからこそ最初の進め方を間違えないことが、
    円満な解決への近道だと思います。

  • 私が回答します

    投稿日
    2026/07/31

    弟様が意図的に協議を拒否・無視している場合、当事者間だけで手続きを完結させるのは困難であり、弁護士等の専門家へのご相談・ご依頼をおすすめします。

    以下に、「法定相続分」「遺留分」「お母様の民事信託(家族信託)」の観点を交えて、具体的な対応方針を解説します。

    1. 権利と割合の確認(法定相続分と遺留分)
    今回の相続人は 「お母様(配偶者)」「あなた(長女)」「妹様(次女)」「弟様(長男)」の計4名 と推定されます。
     ◆法定相続分
      母:1/2
      子供たち(あなた、妹、弟):残り1/2を3等分 = 各 1/6
      遺留分(最低限保障される取り分):法定相続分の1/2ですので、弟様の遺留分は 全体の 1/12 となります。
     遺産分割協議は「相続人全員の合意」が成立しなければ、1文字の変更も1人の除外もできません。
     弟様を除外して作成した遺産分割協議書は無効となり、実家の売却も口座の解約・払戻も名義変更手続きが通りません。


    2. 実家の売却とお母様への資産集約(民事信託の活用)
    「実家を売却してお母様の施設費用(月20万円)に充てる」というお考えは非常に合理的ですが、2つの壁があります。
     ① 実家売却には「全員の同意」が必要
      遺産分割協議により、実家をお母様単独名義にするか、あるいは「売却して代金を母に取得させる」旨の合意を全員で行う必要があります。弟様が協議に応じない場合、遺産分割が未成立のままでは売却手続きが進みません。また手続きの方法によっては「相続税」などに大きな違いが生じることがあります。
     ② お母様の名義にした後の「将来の認知症・判断能力低下のリスク」
      今回、無事に実家をお母様の名義(あるいは売却代金をお母様の口座)に移せたとしても、将来的にお母様の判断能力が低下すると、その資金を自由に動かせなくなるリスクがあります。
     そこで有効なのが「民事信託(家族信託)」です。
     ・お母様が元気なうちに、お母様(委託者)とお子様(受託者:例えばあなた)の間で信託契約を結びます。
     ・お母様の財産管理権限をあなたに移すことで、万が一お母様の判断能力が落ちた後でも、あなたが医療費や施設費の支払い、あるいは保有資産の管理・処分を柔軟に行えるようになります。
     ・ポイント:民事信託はお母様と受託者(あなた等)との「契約」ですので、お母様の意思表示がしっかりしている今だからこそ実行可能です。遺産分割問題の解決と並行して、お母様の財産管理スキームとして検討する価値が非常に高い選択肢です。


    3. 弟様が協議に参加しない場合の具体的な手順
     当事者間での連絡に一切応じない場合、以下のステップで進めるのが一般的です。
     ・ステップ1:内容証明郵便による意思確認
      単なる電話やLINEではなく、弁護士名義などで「遺産分割協議に応じるよう求める文書」を内容証明郵便で送付します。第三者(専門家)が入ることで、弟様が協議の場に出てくるケースも多くあります。
     ・ステップ2:家庭裁判所への「遺産分割調停」の申し立て
      それでも無視や拒否が続く場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。
      そして裁判所の調停委員が間に入り、合意を目指します。
      なお調停にも出席しない場合は「審判」手続きに移行し、裁判官が法定相続分等を考慮して強制的に分割方法を決定します。


    4. 凍結口座と当面の施設費用への対応
     遺産分割協議が長引く場合、お母様の施設費用(月20万円)の支払いが滞る懸念があります。これに対しては、以下の制度を活用して当面の現金を確保できます。
     ・遺産分割前の仮払い制度(預貯金の払戻し制度)
      遺産分割協議が成立していなくても、各金融機関の窓口で一定額まで単独で払戻しが受けられます。
      ※計算式:相続開始時の預貯金口座の残高 × 1/3 × 申請する相続人の法定相続分(※同一金融機関につき上限150万円)
     ・お母様やあなたがこの制度を利用して払戻しを受け、当面の施設費に充てることが可能です。


    5. 今後の方針・アドバイス
     自分たちだけで作成・解決を目指すのは、弟様が不参加である以上、不成立に終わるリスクや時間がかかりすぎるリスクが高くなります。
     1.専門家(弁護士・司法書士・行政書士等)への相談
      遺産分割のトラブル・調停:弁護士への相談が適しています。
      実家の名義変更・民事信託の設計:民事信託に詳しい司法書士や専門コンサルタントへの相談がスムーズです。
     2.お母様の意思確認と民事信託の準備
      お母様が「子供に一任する」とおっしゃっている意志を尊重しつつ、お母様の今後の安心のために民事信託を組成できるよう、早めに専門家に道筋を相談することをお勧めします。
      お父様の口座凍結や月々の施設費など、焦るお気持ちも強いかと思いますが、まずは「預貯金の仮払い制度」で当面の資金繰りをつけつつ、第三者の専門家を交えて整然と手続きを進めていくのが結果として一番の近道となります。

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