不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/06

    この相談は、単に「親の土地だから相続人3人で分ける」という話にしてしまうと、
    かなり危険です。
    ポイントは、土地と、その上に建っている相談者名義の建物を一体で考えることです。
    借地借家法・民法・相続税の観点を整理すると、
    私は「今のうちに父親の意思を明確にしておくべきケース」だと思います。

    今回のケースでは、
    まず
    「父親の土地だから、相続が始まったら兄・本人・妹の3人で単純に3分の1ずつ」
    という考え方だけでは整理できません。

    ご自身名義の建物が建っていて、住宅ローンもご自身で返済しているからです。

    お父様から「自由に使っていい」と言われ、
    地代も権利金も払わずに土地を使用しているのであれば、
    一般的には親子間の「使用貸借」と考えるのが自然です。

    国税庁も、親の土地に子が家を建て、地代や権利金を支払っていないケースについて、
    土地を使用する権利の価額は原則としてゼロとして扱い、贈与税の対象にはしないとしています。

    ただし、ここで注意したいのは、「使用貸借だから何の問題もない」という意味ではないことです。

    むしろ相続が始まったときに、兄弟間で問題になりやすいのはここからです。

    お父様が亡くなった場合、土地はお父様の相続財産になります。

    一方、土地の上に建っている家はご自身の所有です。

    つまり、
    「土地は父親の財産」
    「建物は自分の財産」
    という別々の財産が同じ場所に存在している状態です。

    そのため、兄から「土地は3人の相続財産なのだから、
    あなたがその土地を独占して使うのは不公平ではないか」と言われる可能性は十分あります。

    ただ、だからといって、
    相続が発生した瞬間に
    「家を取り壊して出ていかなければならない」という単純な話でもありません。

    ここで重要になるのが、現在の土地の使用関係です。

    今回のように、お父様が無償で土地を使わせている使用貸借であれば、
    契約期間や使用目的、終了条件などがどのようになっているのかが重要になります。

    また、建物を所有するために土地を使用しているという事情もありますので、
    単純に「相続したから今日から土地を使うな」と処理できる問題ではありません。

    ただし、使用貸借は、
    一般的な借地借家法上の借地権と同じように強い権利があると考えない方がいいです。

    ここはかなり大事なところです。

    地代を払っている通常の土地賃貸借であれば、
    借地借家法によって借地人の権利が強く保護される場合があります。

    しかし、親子間で無償で土地を使わせてもらっている使用貸借の場合、
    「借地権があるから将来も土地を当然に使い続けられる」と考えてしまうのは危険です。

    そして税務上も、使用貸借の場合には土地を貸宅地として大幅に評価減するのではなく、
    原則として自用地として評価します。
    国税庁も、親の土地に子が家を建てた使用貸借について、
    相続時にはその土地を自用地として評価するとしています。

    つまり、
    相続税の面でも
    「自分が家を建てて住んでいるから、その土地の価値が大きく下がる」
    という単純な話ではありません。

    ここで兄弟間の問題が出てきます。

    例えば、お父様の財産が
    ・この土地 3,000万円
    ・その他の財産 1,000万円
    だったとします。
    単純化すると、相続財産は4,000万円です。

    お父様が「土地はあなたに渡す」と考えていたとしても、
    遺言がなければ、相続人全員で遺産分割の話し合いをすることになります。

    そのとき兄や妹が、
    「土地をあなたが取得するなら、その分ほかの財産を多くもらう」
    「土地をあなたが取得する代わりに、代償金を払ってほしい」
    といった話をする可能性があります。

    逆に、お父様が「この土地はあなたに相続させる」という遺言を残しておけば、
    お父様の意思を明確にすることができます。

    ただし、遺言を書けば兄や妹の権利が完全になくなるわけではありません。

    兄や妹には、一定の条件のもとで遺留分の問題が出てくる可能性があります。

    そのため、「父親に遺言を書いてもらえば全て解決」と考えるのも少し違います。

    それでも、何もない状態より、お父様の意思が明確な遺言がある方が、
    相続の話し合いをする上では大きな意味があります。

    私がこの相談を受けたら、遺言だけで終わらせず、
    今のうちにお父様・相談者・兄・妹で、土地をどうするつもりなのかを
    一度話しておくことをお勧めします。

    特に、
    「父はこの土地を最終的に誰に渡したいのか」
    「相談者はこの家に住み続けたいのか」
    「兄と妹はそれをどう考えているのか」
    「土地を相談者が取得する場合、ほかの相続財産とのバランスをどうするのか」
    ここを整理しておくことです。

    兄から「自分だけ土地を使っているのは不公平」と言われているのであれば、
    むしろ今の段階で話しておいた方がいいと思います。

    相談者からすれば、「自分のお金で家を建てて住宅ローンまで払っているのだから、
    この土地も自分が使うのが当然」と感じると思います。

    一方、兄からすれば、「土地そのものは父親の財産なのだから、
    自分たちにも相続する権利がある」という考えになるでしょう。

    どちらが一方的に悪いという話ではありません。

    だからこそ、相続が発生してから初めて話し合うのではなく、
    お父様が元気なうちに整理しておくことが大切です。

    そして、
    個人的には「父がいずれ自分に渡すと言っている」
    という口約束だけで安心するのはお勧めしません。

    家を建てるときには住宅ローンを組むほどの大きなお金を使っているわけですから、
    土地についても将来どうするのかをきちんと形にしておいた方がいいです。

    遺言を作るのであれば、公正証書遺言なども含めて、
    司法書士や弁護士、必要に応じて税理士にも相談しながら作成した方が安心です。

    また、相続税については、土地の評価額だけでなく、
    お父様の預貯金やその他の不動産などを含めた全体の財産状況によって判断が変わります。

    小規模宅地等の特例が使える可能性もありますが、適用には細かな要件がありますので、
    「親の土地に住んでいるから必ず使える」とは考えない方がいいでしょう。

    今回、一番避けたいのは、お父様が亡くなってから兄弟3人で初めてこの問題を話すことです。

    その時には、相談者には「自分の家が建っている」という事情があり、
    兄弟には「父の土地を相続する権利がある」という事情があります。

    ここがぶつかると、感情的な問題になりやすいです。

    家を建てたこと自体は間違いではありませんし、
    住宅ローンを自分で払っていることも当然考慮すべき事情です。

    ただ、それと「土地を自分だけのものにできるか」は別問題です。

    私なら、今のうちにお父様の意思を明確にして、遺言を含めて相続の準備をしておきます。

    そして兄弟にも、「自分だけが得をしたい」という話ではなく、
    「この土地には自分名義の家が建っていて、家族も住んでいる。
    だから、将来土地をどうするのが一番揉めないのかを今のうちに決めておきたい」と伝えます。

    相続は、亡くなってから考えるものではなく、元気なうちに家族で整理しておくことで、
    かなりのトラブルを防げます。

    今回のケースでは、家を建てたことよりも、
    「土地について親子・兄弟の間で将来の扱いを曖昧なままにしていること」
    の方が大きな問題だと思います。

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