不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    投稿日
    2024/12/15

    角田浩崇

    イエステーション博多店 (株)コムハウス

    • 30代
    • 福岡県
    • 男性
    • 不動産会社

    はじめまして、イエステーション博多店 ㈱コムハウスの角田と申します。

    アパートの相続を見据えた将来計画について、売却を希望されているとのことですが、現在の家賃設定を維持するという意向がある場合、いくつかの注意点があります。以下にアドバイスを整理します。

    1. 現在の家賃設定の維持とリスク
    ・家賃設定を引き継ぐことは可能か
    新しいオーナーが家賃設定を変えない場合、賃貸契約は原則として、オーナーが変わっても賃貸借契約は引き継がれる(民法上の原則)。つまり、現在の借主(お父様の友人家族)は、これまでの条件で引き続き住む権利があります。ただし、将来的に新オーナーが家賃を変更しない保証はありません。

    ・家賃値上げの可能性
    オーナーチェンジ後、新オーナーが家賃改定を求める場合もあります。ただし、以下の条件を満たさない限り、家賃変更を一方的に行うことはできません。

    ①経済情勢の変化(物価上昇、管理費の増加など)
    ②近隣家賃相場との差が大きい場合
    これらを主張するには訴訟などが必要となり、現実的には簡単に家賃を上げるのは難しいことが多いです。

    2. 現在の家賃設定を維持する方法
    現在の家賃設定をなるべく守るために以下の方法が考えられます。

    (1) 売却前に家賃契約を固める
    賃貸借契約を定期借家契約に変更する方法があります。
    この場合、家賃や契約期間を固定することが可能です。ただし、現在の借主が新しい条件に同意する必要があります。現在の条件での継続を望む場合、借主と新オーナーの間で契約条件を明文化することが望ましいです。

    (2) 売却条件に「現家賃設定の継続」を含める
    不動産売却時、買主との契約条件に「現行の家賃設定を継続する」ことを盛り込む交渉が可能です。ただし、買主がこれを受け入れるかどうかは市場状況や物件条件次第です。特に収益性が重視される投資家にとって、低家賃はネックになる可能性があります。

    3. 家族信託の活用について
    お父様が高齢の場合や、あなたが相続後すぐに売却を考えている場合、家族信託の仕組みを利用することでスムーズに対応できるケースがあります。

    (家族信託の概要)
    ・目的
    家族信託は、財産の管理や運用を信頼できる家族(受託者)に託し、本人(委託者)が元気なうちに資産をどう扱うか計画を立てておく制度です。

    ・具体的な流れ
    お父様が委託者となり、あなた(娘さん)を受託者として信託契約を結びます。
    アパートの運用・売却に関する権限を事前にあなたに託す形を取ります。あなたがアパートの所有者として登記されるわけではないため、相続時の手続きが簡略化されます。

    (メリット)
    ・お父様が健在なうちに、アパートの運用方針(家賃設定の維持や売却タイミングなど)を明確にしておける。
    ・相続手続きがスムーズになる。
    ・共有名義になるリスクを回避できる。

    4. 実務的なアドバイス
    (1) 賃貸条件の確認と文書化
    現在の賃貸借契約書の内容を確認してください。家賃変更や契約更新の条件がどのように記載されているかが重要です。

    (2) 売却時の収益計算
    家賃を安くしている部屋がある場合、その影響で物件の収益性が低く見られ、売却価格が下がる可能性があります。そのため、売却前に家賃設定の変更を考慮するか、不動産業者に「現状の家賃での売却可能性」を相談するのが得策です。

    (3) 家族信託の具体化
    家族信託を活用すれば、お父様の意思を尊重しつつ、あなたが売却後の課題を軽減できます。信託契約には専門家(弁護士、司法書士など)のサポートが必要になるので、早めに相談しましょう。

    5. 結論
    家賃を現状のまま維持することは法的には可能ですが、オーナーチェンジ後の確約は難しい部分があります。売却条件として設定するか、家賃設定を固定する定期借家契約に変更することで対策が可能です。相続後すぐの売却を考えるなら、家族信託を活用し、あなたが経営権をスムーズに引き継げるよう準備を進めてください。最終的には、信頼できる不動産業者や専門家に相談し、法的な手続きを含めた総合的なプランを立てることが重要です。

    以上、参考になれば幸いです。

  • 私が回答します

    投稿日
    2024/06/26

    奥林洋樹

    H.L.C不動産コンサルティング

    • 50代
    • 北海道
    • 男性
    • 専門家

    ご相談拝見しました。ご尊父と友人の信頼関係に起因する難しい問題ですね。

    結論としてオーナーチェンジ物件の購入者が応諾すれば、現行の家賃設定のまま継続していくことは可能でしょう。しかし口約約束では反故にされる可能性が高いため、売買契約書にその趣旨を盛り込んでおくか、覚書等で書面を取り交わしておく必要があります。

    もっとも、その条件を承諾してもらうには、物件価格の調整が必要な可能性があります。

    オーナーチェンジ物件の購入者は、利回りが得られるかを重視して購入を検討します。近傍同種の建物賃料と比較して明らかに安い状態であれば、物件価格をを低く希望するのはと合理的だからです。


    現行の借地借家法は借主に優しく、貸主に厳しい側面を持っています。生活の基盤である住居に関し、貸主の横暴は認めないとの趣旨があるからです。

    とはいえ家賃の増額が認められない理由ではありません。現在の借主様とどのような賃貸借契約を締結されているかは伺い知れませんが、借地借家法11条1項本文、32条1項本文では以下のような要件が具備されている場合、賃料増減を請求できると例示しています。

    1.土地もしくは建物に対する租税その他の負担の軽減
    2.土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下
    3.その他の経済的事情の変動
    4.近傍同種の建物賃料との比較

    合意書等が存在していなければ上記内容に基づく賃料増減請求に抗う術がなくなりますから、先述した書面等の写しをご尊父の友人に渡すと同時に、内容についても説明しておくと良いでしょう。

    また覚書等には、オーナーチェンジ物件の購入者がさらに転売した場合に備え、「新たな購入者は覚書の約定内容を継承する」旨の条項を盛り込んでおくと良いでしょう。

    これらにより家賃増額を完全に防止できるとまで断言できませんが、少なくても一方的な増額請求に対抗するための証拠になります。

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