不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/19

    盛土の上に建っているというだけで、「購入しない方がいい」とは私は思いません。

    実際、住宅地には盛土や切土によって造成された土地がたくさんありますし、
    盛土=危険な土地ということではありません。

    ただ、
    盛土の場合は「その盛土がどういうものなのか」を確認してから購入を判断した方がいいです。

    国土地理院の土地条件図でも、盛土地・埋立地は、地震時の液状化や流動化、不等沈下、
    降雨による法面崩壊などに注意が必要な地形として整理されています。
    つまり、盛土であること自体が問題なのではなく、地形や造成方法、盛土の規模、締固め、
    擁壁などを含めて考える必要があります。

    私なら、まず「盛土の上だからやめる」という判断はせず、次のところを確認します。

    一番知りたいのは、どのくらいの盛土なのかです。

    例えば、単純に敷地を少し高くするために造成したものと、
    谷を埋めて大規模に造成した土地では、同じ「盛土」でも意味がかなり違います。

    特に谷を埋めた大規模盛土造成地などであれば、
    地震時の滑動崩落について確認したいところです。
    国土交通省も、盛土について地震時だけではなく、
    豪雨時の被害も含めて安全対策を進めています。

    次に確認したいのが、造成時の資料です。

    造成工事の許可関係の資料、造成図面、擁壁の資料、検査済証などが残っているのであれば、
    それだけでも判断材料になります。

    逆に、
    古い土地で「いつ、誰が、どのように盛土したのか分からない」「擁壁についても資料がない」
    という状態なら、私は少し慎重になります。

    また、建物そのものについても見ます。

    床の大きな傾き、建具の開閉不良、基礎の大きなひび割れ、擁壁のひび割れや膨らみ、
    土地の沈下、雨水の流れなど、現在すでに何か兆候が出ていないかです。

    もちろん、これだけで安全性を判断できるわけではありません。

    気になるのであれば、
    契約前に建築士や地盤・擁壁について確認できる専門家に見てもらう方法もあります。
    中古戸建てのインスペクションだけでは盛土そのものの安全性まで
    十分に判断できないこともありますので、
    必要であれば調査の範囲を最初に確認した方がいいです。

    そして、私はここが一番大事だと思います。

    「安全か危険か」を100%判断しようとするより、
    「分からない部分がどのくらい残っているか」を見た方がいいです。

    例えば、造成資料もあり、擁壁も適法に施工され、現地にも問題らしい兆候がなく、
    過去の地盤や造成についてもある程度確認できるのであれば、
    盛土という理由だけで候補から外す必要はないと思います。

    一方で、盛土の規模が大きく、造成の経緯も分からず、擁壁にも不安があり、
    地盤についても資料がない。

    そのうえで
    「何かあったら怖いけれど、価格は周辺の普通の土地とほとんど変わらない」というのであれば、
    私は慎重になります。

    なぜなら、購入後に問題が起きた場合、そのリスクを負うのは売主でも仲介会社でもなく、
    基本的には購入した自分だからです。

    盛土規制法によって、盛土等について全国的な規制や安全確保の仕組みが整備されていますが、
    現在の法律に基づく規制があることと、
    その土地について将来の安全が保証されていることは別の話です。
    土地所有者等にも、盛土等を安全な状態に維持する責務があります。

    また、国土地理院では過去の地形図や航空写真から、
    造成前と現在の地形を比較して盛土・切土の分布や地形改変量を把握する手法も公開しています。
    ですから、今の土地だけを見るのではなく、
    「昔はここがどういう地形だったのか」を確認することにも意味があります。

    私なら、
    最終的には「盛土だから買わない」でも「専門家が大丈夫と言ったから絶対安心」でもなく、
    「どんな盛土なのかが分かっているか」
    「造成や擁壁について確認できる資料があるか」
    「現在、沈下や擁壁などに問題の兆候がないか」
    「ハザードマップや地形から見ても、その土地にどんなリスクがあるか」
    「そのリスクを踏まえた価格になっているか」
    このあたりを見て判断します。

    そして、もし調べても分からない部分が大きいのであれば、それ自体が一つの判断材料です。

    戸建ては土地と建物を一緒に買うものですが、建物は古くなれば建て替えられます。
    一方、土地の地盤や造成条件は簡単には変えられません。

    今のマンションが手狭になって戸建てを探しているとのことですから、
    気に入った家を見つけると
    「多少の不安なら買ってしまいたい」という気持ちも出てくると思います。

    でも、盛土について不安を感じているのであれば、そこを曖昧にしたまま買う必要はありません。

    私なら、まず仲介会社に「この土地は具体的にどのような盛土なのか、
    造成時の資料や擁壁の資料は残っていますか」と聞きます。

    そこで出てくる資料や説明を見て、「これなら確認できることは確認できた」と思えるのか、
    それとも「結局よく分からない」のか。

    その差はかなり大きいです。

    不動産は、リスクがゼロの物件を探すというより、
    分かっているリスクと分からないリスクを分けて、
    そのリスクを自分が引き受けられるかどうかを考えて買うものだと思います。

    盛土だから購入しない、という必要はありません。

    ただ、盛土の内容がよく分からないまま「家が気に入ったから」という理由だけで進めるのは、
    私はお勧めしません。

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