不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/10/08

    ご相談のケースで、まず押さえておきたいのは、
    「住宅ローンの連帯保証人であること」と「自宅に新たな抵当権を設定すること」
    は別の話だということです。

    自宅の所有者が夫だけであれば、原則として夫は、
    妻が住宅ローンの連帯保証人であることだけを理由に、
    妻の承諾を得なければ抵当権を設定できない、というものではありません。

    つまり、
    「私が連帯保証人なのに、勝手に抵当権を付けられたから無効」という単純な話ではありません。

    ただし、今回重要なのはその先です。

    登記簿に追加された抵当権が本当に夫の会社の事業資金の借入を担保するものなのであれば、
    その借入が夫婦の共同生活のために生じたものなのか、
    それとも夫自身の事業のための債務なのかによって、
    離婚時の財産分与での扱いは変わってきます。

    財産分与は、基本的に婚姻中に夫婦の協力によって形成・維持した財産を清算するものです。
    夫名義の家であっても、
    婚姻中に夫婦の協力で取得したものであれば財産分与の対象になり得ます。

    一方で、夫が自分の会社の事業資金として借りたお金まで、
    当然に夫婦共通の借金になるわけではありません。

    ここは非常に大事なところです。

    例えば、

    自宅の現在の売却価格が5,000万円
    住宅ローン残高が3,000万円
    今回追加された事業資金の抵当権の被担保債権が1,000万円

    だとします。

    実際に自宅を売却して抵当権を抹消するのであれば、住宅ローンだけでなく、
    売却によって抹消する必要がある今回の抵当権についても、
    原則としてその担保債務を精算する必要があります。

    したがって、単純化すれば、

    5,000万円-3,000万円-1,000万円=1,000万円

    が売却後に残る金額という計算になります。

    抵当権は、その不動産について他の債権者に優先して弁済を受ける権利です。
    抵当権が複数ある場合、その順位は原則として登記の前後で決まります。

    ただし、だからといって「事業資金1,000万円を夫婦で500万円ずつ負担する」
    という話になるわけではありません。

    その1,000万円が夫自身の会社の事業資金であれば、財産分与の計算上、
    それを当然に妻の負担として扱えるわけではないからです。

    むしろ今回のケースでは、

    「その事業資金は何のために借りたのか」
    「夫個人の借入なのか、会社の借入なのか」
    「実際の借入残高はいくらなのか」

    を確認することが先です。

    特に、登記簿に書かれている抵当権の内容だけで
    「1,000万円の借金が残っている」と判断してはいけません。
    登記上の債権額と現在の実際の残債務は一致しない場合があります。

    そして、もう一つ注意したいのが「売却すれば必ずその借金を妻が負担する」という考え方です。

    不動産を売却する際には、抵当権を抹消して買主にきれいな権利関係で引き渡す必要があります。そのため、売却代金から担保債務を精算することになります。

    しかし、これはあくまで「その不動産を売却するために債権者へ返済する」という話です。

    離婚における財産分与では、その後、夫婦の財産全体を見て、
    どの財産が婚姻中に形成されたものなのか、
    どの債務が夫婦共同生活のためのものなのかなどを整理して、
    最終的な分与額を考えることになります。
    裁判所も、財産分与では双方の財産や一切の事情を確認して解決を図るとしています。

    ですから、
    今回のように離婚前になって夫が自宅を担保に事業資金を借りていたことが分かったのであれば、
    私は「家を売った残りを単純に半分にしましょう」と進めるのは危ないと思います。

    まず登記簿の抵当権の内容と、
    借入先・借入金額・現在の残高・借入日・資金使途を確認した方がいいです。

    そのうえで、その借入が夫婦の財産形成や共同生活とは関係のない夫の事業資金なのであれば、
    財産分与の中でどのように扱うのかを夫婦間で明確にしておくことが重要です。

    なお、離婚に伴う財産分与そのものには、通常は贈与税はかかりませんが、
    不動産そのものを財産分与する場合には、分与した側に譲渡所得の課税が生じることがあります。

    不動産を売却して現金で清算するのか、
    どちらかが家を取得するのかによっても税金や手続きが変わります。

    今回のようなケースは、
    抵当権が付いたことだけを見て「夫が勝手に借金を増やしたから全部無効」と考えるのも、
    「家の売却代金から借金を引いて残りを半分にすればいい」と考えるのも、どちらも危険です。

    離婚前であれば、売却の話を進める前に、登記簿と借入内容を確認したうえで、
    弁護士などにも財産分与の整理をしてもらうのが安全だと思います。

    不動産を売る側から見ても、今回のようなケースでは「いくらで売れるか」だけではなく、
    「売却代金から何を精算し、最終的に夫婦それぞれにいくら残るのか」
    まで確認してから売却を考えることが大切です。

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