不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

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    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/24

    離婚すると、元夫名義のマンションについて、
    当然に元妻が住み続けられる権利を持つわけではありません。
    ただ、離婚する際に「子どもが高校を卒業するまでは、この家に妻と子どもが住んでよい」
    という合意をしていたのであれば、その合意がどのような内容だったのかによって話は変わります。

    民法上、無償で家を使わせる約束は「使用貸借」として成立する場合があります。
    使用貸借は、必ずしも契約書がなければ成立しないわけではありません。
    問題は、「本当にそのような約束をしたのか」「いつまで住む約束だったのか」
    を後から確認できるかどうかです。
    民法上も、使用貸借について期間を定めた場合には、
    その期間が満了することで終了するという規定があります。

    ですから、「口約束だから無効」と考えるのは少し違います。

    例えば、離婚協議のときに元夫が
    「子どもが高校を卒業するまではここに住んでいい」と明確に話していて、
    そのことを知っている親族がいる、メールやLINEにその話が残っている、
    離婚協議書などに関連する記載がある、といった事情があれば、
    その約束を裏付ける材料になります。

    逆に、当時の話が「子どもが大きくなるまでは住んでいていいよ」
    という程度の曖昧なものだったのであれば、
    後から「高校卒業までという明確な期限付きの権利だった」と主張することは難しくなります。

    そして、
    今回もう一つ重要なのが、そのマンションが離婚時の財産分与でどのように扱われたのかです。

    住宅ローンも元夫名義、マンションも元夫名義だからといって、
    必ずしも離婚時の財産分与とは無関係とは限りません。

    婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持された不動産であれば、
    名義が夫単独であっても財産分与の対象になることがあります。
    法務省も、夫名義で購入した土地建物であっても、婚姻中の夫婦の協力によって形成された財産であれば財産分与の対象となり得ると説明しています。

    また、住宅ローンが残っている住宅についても財産分与の対象となり得ますが、
    ローンの債務者が元夫であることと、
    財産分与の問題は別です。住宅を妻が取得する合意をしても、
    金融機関との関係ではローンの債務者が当然に妻へ変わるわけではありません。

    ですから、今回の話では「元夫名義だから元夫が好きなように売れる」
    というところだけを見てはいけません。

    離婚時に、

    「マンションは元夫が所有する」
    「住宅ローンも元夫が支払う」
    「その代わり、子どもが高校を卒業するまでは妻と子どもが無償で住む」

    というような合意がセットになっていたのであれば、その経緯はかなり重要です。

    一方で、元夫が「ローンの支払いがきついので売却したい」と言っているのであれば、
    こちらも無視できません。

    住宅ローンを滞納すれば、金融機関との関係で抵当権が実行され、
    最終的に競売になる可能性もあります。
    元夫がローンを払い続けられない状態なのであれば、
    「約束したのだから高校卒業まで何があっても住ませてほしい」とだけ主張しても、
    問題の解決にはなりません。

    ですから、私なら最初に「売らせない」という交渉をするより、離婚時の約束を確認した上で、
    元夫の現在のローン残高と毎月の返済額、マンションの現在の売却価格、
    売却した場合にローンを完済できるのかを確認します。

    その上で、例えば、

    「子どもが高校を卒業するまで住み続ける」
    「その間の住宅ローンは元夫が支払う」
    「妻側も一定の費用を負担する」
    「売却する場合には、代わりの住居や転居費用について協議する」

    など、現実的な落としどころを話し合う余地があります。

    逆に、元夫が本当にローンを支払えないのであれば、
    マンションを売却すること自体を止めることよりも、
    「売却するなら子どもと自分の生活をどうするのか」を一緒に考えた方がいいでしょう。

    そして、離婚時の合意について元夫と話がまとまらないのであれば、
    家庭裁判所の調停を利用することもできます。
    家庭裁判所では、離婚後の財産分与などについて調停で話し合うことができます。
    現在は財産分与請求の期間も改正されており、2026年4月1日以降に離婚した場合は、
    原則として離婚から5年以内が家庭裁判所への申立期間です。
    2026年3月31日以前の離婚については従前どおり2年です。


    今回の相談で一番確認してほしいのは、「口約束だったから諦めるしかないのか」ではありません。

    離婚したときに、なぜ「子どもが高校を卒業するまで住んでいい」という話になったのか。

    そして、その約束が財産分与や養育費などの取り決めとどういう関係にあったのか。

    ここを確認することです。

    もし当時のメールやLINE、離婚協議書、公正証書、調停調書などが残っているのであれば、
    まずそれを全部確認してください。口頭の約束についても、
    当時その話を聞いていた人がいるのであれば、その人も含めて整理しておいた方がいいです。

    その上で、元夫には「口約束だから意味がない」と決めつけるのではなく、
    「離婚するときに子どもが高校を卒業するまでは住んでいいという約束で離婚したと
    私は認識している。その約束をどう考えているのか」と確認するのがいいと思います。

    その約束が明確に成立していたと認められる事情があるなら、
    売却するからすぐ退去してほしいという話を、
    そのまま受け入れなければならないとは限りません。

    ただし、住宅ローンを元夫が抱えている以上、
    居住する側だけの権利を主張して終わる問題でもありません。

    私なら、離婚時の合意、現在のローン残高、マンションの現在価格、
    財産分与の処理を一度整理してから、
    子どもが高校を卒業するまで住み続ける方法が本当に可能なのかを考えます。

    「口約束だから諦める」でも、「約束したのだから絶対に売るな」でもなく、
    離婚時に何を約束して離婚したのかを確認した上で、
    現在のローン事情も含めて解決策を探すべきケースだと思います。

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