不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    投稿日
    2026/09/19

    ご相談を拝見しました。

    原則として、相続放棄をすると、最初から「亡くなったお父様の相続人ではなかった」扱いになります。そのため、所有権もない実家の解体義務や解体費用を請求される法的根拠はありません。

    市役所は、戸籍を追って相続人に一斉連絡をしているケースが多く、相続放棄などの事実関係を事前に確認していないと思われます。また、書面も「請求」ではなく「相談・連絡」とされているのではないでしょうか。

    したがって、市役所に連絡をして「家庭裁判所で相続放棄が受理されており、手元に『相続放棄申述受理通知書』もあります。相続権も所有権も放棄しているため、費用負担や解体には応じられません」と主張されれば良いと思われます。

    ただし、民法第940条では相続放棄をした場合においても、相続を放棄する時に現に相続財産に属する財産を占有したいている時は、「次の管理人(相続財産清算人など)に財産を引き渡すまでは、自分の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の保存を継続しなければならない」と規定されている点に注意が必要です。

    例えば放置によって建物が倒壊し、第三者に大きな損害を与えた場合に責任を問われるリスクがあるからです。「保存(現況維持)」の範囲で構いませんが、気にかけておかれた方が良いでしょう。

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/19

    相続放棄の手続きをして、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書も届いているのであれば、
    基本的にはお父様の財産や借金を相続する立場ではありません。

    ですから、「相続放棄をしたのだから、当然に自分で実家を解体して、
    その費用まで負担しなければならない」という話ではありません。

    ただ、今回の相談で私が少し気になったのは、
    解体費そのものよりも「実家の鍵を相談者様が預かっている」というところです。

    ここは、なぜ鍵を持っているのかが非常に大事です。

    現在の民法940条では、相続放棄をした人であっても、
    相続放棄をした時点で相続財産を「現に占有していた」場合には、
    次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務があります。

    一方で、単に鍵を持っているというだけで、
    直ちに民法940条の「現に占有している」に当たると決まるわけではありません。
    実際に住んでいたのか、自由に出入りして管理していたのか、
    鍵をどういう経緯で預かったのかなど、具体的な事情で判断されます。
    法務省の改正時の説明でも、相続放棄者がこの義務を負うのは、
    放棄の時点で相続財産を現に占有していた場合に限るとされています。

    今回、
    「鍵は一時的に預かっているだけで、中の荷物にも手をつけていない」ということなのであれば、
    その事情はかなり重要です。

    ただ、
    だからといって「鍵を持っているだけだから絶対に何の責任もない」
    とまでは言い切らない方がいいと思います。

    むしろ市役所には、
    「私は家庭裁判所で相続放棄をしており、相続放棄申述受理通知書もあります。
    実家については相続する意思はありません。
    鍵は一時的に預かっているだけですが、この場合、
    市として私に求めているのは具体的に何でしょうか」
    と確認した方がいいです。

    そして、解体費についても「相続放棄しているので払いません」とだけ答えるのではなく、

    「相続放棄をしている私に対して、どのような法的根拠で解体を求めているのか」
    を市役所に確認してください。

    空き家については、所有者等に適切な管理を求める制度があり、危険な状態の空き家については、
    一定の手続きを経て市町村が必要な措置を命じたり、行政代執行を行ったりする制度もあります。

    ただし、
    それと「相続放棄をした本人が自分のお金で解体費を負担する義務があるか」は別の問題です。

    今回、相続人が全員相続放棄して、結果として誰も相続する人がいなくなっているのであれば、
    家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらい、相続財産を清算していく制度があります。
    裁判所も、相続人全員が相続放棄した場合を、
    相続財産清算人を選任できるケースとして明確に案内しています。

    ですから、今回のように「誰も実家を引き受けたくない」という状況なら、
    市役所から言われたからといって、
    相談者様がそのまま解体業者を探して自分で解体する話に持っていく必要はありません。

    むしろ、まずは相続放棄をしたことを市役所に伝え、
    相続財産を誰が管理・処分するのかという問題を整理してもらうことが先だと思います。

    そして、鍵については、ここを曖昧にしたまま持ち続けるのはあまりお勧めしません。

    「鍵を持っている=実家を管理している」と単純に決まるわけではありませんが、
    実際に鍵を持って自由に出入りできる状態であれば、
    市役所から見ても「この人が管理できるのでは」と考えられる余地があります。

    相続放棄をした後に、実家の荷物を処分したり、勝手に売却したり、
    解体を依頼したりすることも、相続財産の処分と受け取られるおそれがあるので、
    自己判断では動かない方がいいです。

    私なら、市役所には相続放棄申述受理通知書を提示したうえで、
    鍵についても
    「現在一時的に預かっているだけで、相続財産を処分・管理する意思はありません」と伝え、
    鍵を誰に引き渡すべきなのかを確認します。

    もし他に相続人がいない、あるいは他の相続人も全員相続放棄しているのであれば、
    相続財産清算人の選任について、市役所側にも確認してみていいと思います。

    今回のケースは、「相続放棄したから何もしなくていい」とも、
    「相続放棄しても解体費を払わなければならない」とも、一言では決められません。

    ポイントは、相続放棄そのものと、相続放棄した時点で実家を現に占有していたかどうか、
    そして現在誰がその実家を管理・処分する立場なのかを分けて考えることです。

    特に今回の「鍵を一時的に預かっている」という事実は、
    市役所に説明して、鍵をどう扱うべきかまで確認しておいた方がいいと思います。

    相続放棄まできちんと済ませているのであれば、
    相談者様が「父親の家だから」という理由だけで、
    20万円、100万円といった解体費を当然に自腹で負担する話ではありません。

    ただし、実家の保存について法律上の責任が残っている可能性がある以上、
    そこだけは「相続放棄したから全部終わり」と考えず、
    鍵の引渡しも含めてきちんと整理しておくことが大切だと思います。

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