不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    投稿日
    2026/09/24

    ご相談を拝見しました。

    確かに、古い住宅地などにおいてはよく見受けられる内容ですが、書面(覚書)なしで契約を進めるのはリスクが高いと言えます。ただし、売買契約の前に適切な対策や確認を行えば、リスクを大きく減らした上で購入を検討することは可能です。

    2023年(令和5年)の民法改正により、「他人の土地を通らなければ水道などの設備を引くことができない(または過分な費用がかかる)場合、他人の土地に設備を設置・使用する権利(設備使用権・設置権)」が法律上、明確に認められたため、隣地所有者から「理由なく一切使わせない」「明日から水道を止めろ」といった一方的な拒否をされる可能性は低くなっています。

    一方で、「できるだけ損害が少ない場所・方法で工事をする必要がある」ため、希望通りの工事ができなかったり、迂回工事が必要になって費用が高くなったりするリスクは残ります。

    そのため、現在の売主と隣地所有者の間で、「水道管が隣地を通っていることの確認」「将来の修繕・交換時の立ち入り許諾」「所有者が変わってもこの取り決めを継承すること」との内容を盛り込んだ「覚書」を作成・締結してもらうよう、不動産会社に交渉されることをお勧めします。

    加えて、あらかじめ隣地を経由せず、前面的にある道路の本管から直接自分の敷地へ水道管を引き直す工事(単独引込)が可能かどうかを確認しておかれると良いでしょう。

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/24

    今回のケースは、私は「古い住宅地ではたまにあることだから大丈夫」とは考えません。

    実際、他人の土地を通って給水管が入っている住宅はありますし、
    それだけで購入できない物件というわけでもありません。
    ただ、
    今回は「隣地を通っている可能性がある」「書面が見つかっていない」というところが問題です。

    今まで普通に水が使えていたことと、将来も問題なく使えることは別の話だからです。

    特に確認したいのは、実際にどこを通っているのか、誰の所有する給水管なのか、
    隣地所有者がその配管の存在を把握しているのか、
    そして修理・交換の際に隣地へ立ち入ったり掘削したりすることについて、
    何らかの承諾や権利関係があるのかという点です。

    他人の土地に給水管を設置する場合、土地所有者との同意書などを求める水道事業者もあります。
    自治体によって取り扱いは異なりますが、例えば東京都昭島市や神奈川県川崎市も、
    他人の土地を通して給水管を引き込む場合には、土地所有者の同意を得ることを案内しています。

    一方で、現在の民法では、
    他人の土地を利用しなければ水道などの継続的な給付を受けられない場合について、
    一定の要件のもとで、必要な範囲で他人の土地に設備を設置したり、
    他人が所有する設備を使用したりできる仕組みも設けられています。
    したがって、「書面がない=将来、水道が使えなくなる」とまで単純に考える必要はありません。

    ただ、法律上の権利が問題になる場面まで持ち込まなければならない状態は、
    買主としてはできれば避けたいところです。

    例えば将来、水道管が老朽化して交換が必要になったときに、
    隣地を掘削しなければならないとします。

    そのとき隣地所有者から「うちの土地を掘らないでください」と言われたら、
    単純に「昔から通っている水道管だから工事します」と言って済むとは限りません。
    実際の権利関係や配管の設置経緯、必要性、
    工事方法などによって対応を検討することになります。

    また、隣地が売却されて所有者が変わった場合も、
    これまでの利用状況だけで将来のトラブルが絶対に起きないとは言えません。

    ですから、今回私なら、
    契約前に仲介会社へ「水道管が隣地を通っている可能性がある」という説明だけで終わらせず、
    できる限り調査してもらいます。

    具体的には、
    ・給水管が実際にどの土地を通っているのか
    ・水道局の図面や給水装置の資料で確認できるのか
    ・隣地所有者の承諾書や覚書、協定書などが残っていないか
    ・現在の配管の所有者は誰なのか
    ・将来の修理・交換時に隣地へ立ち入ることについて取り決めがあるのか
    ・別ルートから公道に直接引き直すことが可能なのか、その場合いくら程度かかるのか
    ここまで確認したいです。

    特に「可能性がある」という説明なら、
    まず本当に隣地を通っているのかを確認するところからです。

    そして、調査しても書面が見つからないのであれば、
    その事実自体を重要事項説明や契約書などにきちんと残してもらうことが大切です。
    宅建業者には、買主が物件を取得するかどうかを判断するために重要な事項について、
    調査・説明することが求められます。
    給排水施設などの状況も重要事項説明の対象となる事項です。

    そのうえで、もし隣地所有者が現在も認識していて、
    「この家の給水管がここを通っていることを承知しており、
    将来の修繕等についても使用を認める」という内容の書面を取り交わせるのであれば、
    私はかなり安心して進めやすくなると思います。

    もちろん、隣地所有者から必ず書面を取れるとは限りません。

    だからこそ、書面が取れない場合には、
    「それでもこの物件を買うのか」を価格とのバランスで考えることになります。

    例えば、土地や建物そのものが非常に気に入っていて、
    配管について多少のリスクがあることを理解したうえで、
    価格もそのリスクを踏まえて納得できるのであれば、購入するという判断もあり得ます。

    反対に、書面もなく、配管の位置も正確に分からず、隣地所有者との関係も確認できず、
    しかも将来引き直す必要がありそうなのに、その費用も分からないという状態なら、
    私はそのまま契約することは勧めません。

    水道は家にとって非常に重要なライフラインです。

    「今は普通に水が出ているから問題ない」ではなく、
    「将来も安心して維持できる状態なのか」を確認してから購入するべきだと思います。

    今回、立地が気に入っているのであれば、
    私はこの一点だけで購入を諦める必要はないと思います。

    ただし、「古い住宅地ではよくあること」という説明だけで流すのではなく、
    契約前に配管の位置と権利関係をできる限り調べてもらい、
    書面がなければその事実も含めて契約条件に明確に残してもらう。

    それでも不明な部分が残るのであれば、万一将来引き直すことになった場合の費用まで確認して、
    そのリスクを負ってでも買いたい物件なのかを判断する。

    私なら、この順番で考えます。

    水道管の越境そのものが問題なのではなく、
    「誰の土地を、どんな権利関係で、どのように使っているのかが分からないまま買う」
    ことが一番の問題です。

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