不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    長岡 理知

    長岡FP事務所

    • 50代
    • 青森県
    • 男性
    • 専門家
    投稿日
    2025/08/05

    この度は、長年にわたるご心労、そしてお姉様たちとの辛いご関係について、心よりお見舞い申し上げます。お母様を亡くされ、お父様のご病気も重なり、大変な状況の中で理不尽な仕打ちを受け、計り知れないお怒りと悲しみの中にいらっしゃることとお察しいたします。

    内容について、今後取りうる可能性のある対応策をアドバイスさせていただきます。ご家族への具体的な行動については弁護士にご依頼いただくとして、私からいくつか主観を交えながら書きます。

    お金が欲しい訳ではない、法的に裁きを受けさせたいというお気持ちを尊重し、お父様がお亡くなりになった後、事実を明らかにするために何ができるかという視点でご説明します。

    1. 無断で売却されたご実家の問題

    これが最も重大な問題です。お父様が認知症であるにもかかわらず、お姉様たちがご実家を売却したという点については、法的にその有効性を争える可能性があります。
    確認すべきこと
    まず、事実関係を正確に把握するために、以下の情報を確認する必要があります。

    ・不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)の取得
    ・これは、お近くの法務局で誰でも手数料を払えば取得できます。ご実家の住所(地番)が分かれば問題ありません。
    ・ここには、「いつ」「誰から誰へ」「どのような原因(売買、贈与など)で」所有権が移ったのかが記録されています。これにより、売却が事実か、いつ行われたのか、新しい所有者は誰か、などを正確に知ることができます。

    取りうる法的手段

    登記簿謄本の情報をもとに、以下の法的手段を検討することになります。

    所有権移転登記の無効を主張する

    不動産の売買契約は、所有者(お父様)に「意思能力」があることが大前提です。認知症により、ご自身の財産を売却するという判断ができない状態(意思能力がない状態)であった場合、その売買契約は法的に無効です。

    お父様の死亡後、相続人として「所有権移転登記抹消請求訴訟」を起こすことが考えられます。これは、「あの売買契約は無効だったので、登記を元に戻せ」と裁判所に訴える手続きです。

    ただし、不動産業者に対し、認知症である旨を診断書を用いて正確に伝えていなかった場合、不動産業者から詐欺行為を問われる可能性もあります。契約の撤回を拒否される、あるいは損害額を賠償請求されるかもしれません。


    立証のための証拠

    この訴訟で最も重要になるのは、「売買契約の時点で、お父様に意思能力がなかったこと」を証明することです。
    証拠としては、介護施設への入所記録、当時の要介護認定の資料、医師の診断書などが極めて重要になります。今からでも、弁護士を通じてこれらの記録を開示請求できる可能性があります。

    繰り返しますが、不動産業者にたいして認知症である事実を明確に書面を持って説明していなかった場合は、不動産業者から詐欺罪として訴えられる可能性もあることをご認識ください。
    知的に障害があると明言していなかった場合、契約の破棄は無効となる可能性もあります。「忘れっぽい」などの説明だけでは詐欺となります。

    お姉様たちへの損害賠償請求

    万が一、不動産が善意の第三者(事情を知らずに購入した人)に渡ってしまい、取り戻すことが困難な場合でも、お姉様たちに対して不法行為として、不動産の価値に相当する金額の損害賠償を請求できる可能性があります。

    2. ご実家に残された私物の無断処分について
    ご実家にあったあなたの私物は、当然ながらあなたの所有物です。これを勝手に処分した行為は、法的に問題となります。

    不法行為に基づく損害賠償請求
    民法上の不法行為(第709条)にあたり、処分された私物の価値に相当する金額と、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できる可能性があります。
    処分された私物のリスト、写真、購入時の価格がわかるものなど、価値を証明できる資料をできるだけ集めておくことが重要です。

    3. お姉様による名誉毀損について

    親戚中に「お金を使い込んでいる」などと嘘を言いふらされた行為は、あなたの社会的評価を低下させるものであり、名誉毀損にあたる可能性があります。

    不法行為に基づく慰謝料請求

    これにより受けた精神的苦痛に対して、慰謝料を請求することができます。
    「いつ」「どこで」「誰が」「誰に対して」「どのような内容を話したか」を具体的に記録し、可能であればそれを聞いていた親戚の方に証言してもらえるよう、お願いしておくことが望ましいです。

    4. 今後の具体的な進め方

    これらの問題を法的に解決するためには、個人で対応されるのは非常に困難です。以下のステップで進めることを強くお勧めします。

    弁護士への相談

    まず、相続や不動産問題に強い弁護士に相談してください。お住まいの地域の弁護士会や法テラスなどで、初回無料相談などを利用できます。

    これまでの経緯をまとめたメモ、お母様から託された一筆(これが法的に有効な遺言になる可能性もゼロではありません)、その他関係がありそうな資料を全て持参して相談しましょう。弁護士は、あなたに代わって法的な手続きを進めることができます。

    証拠の収集と保全
    弁護士のアドバイスを受けながら、今のうちから証拠を集めておきましょう。

    * 前述の登記簿謄本。
    * お父様の認知症の程度を示す客観的な資料(介護記録など)。
    * お姉様たちとのやり取りの記録(もしあれば)。
    * 処分された私物のリストと価値の証明。
    * 名誉毀損に関する関係者の証言。

    お父様の死亡後の手続き

    あなたが望むように、お父様がお亡くなりになった後、遺産分割協議の場で、これらの問題をまとめて主張することが現実的な解決策となり得ます。

    お姉様たちが生前にお父様の財産(ご実家)を不当に処分したことは、相続における「特別受益」や「不当利得」にあたる可能性があります。
    話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、法的な場で公正な解決を目指すことになります。裁判所が、これまでの経緯を全て考慮した上で、最終的な遺産の分け方を判断してくれます。

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