不動産お悩み相談室

REAL ESTATE Q&A

  • 私が回答します

    金子徳公

    株式会社ハウジングサクセス

    • 50代
    • 東京都
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/19

    法律上、買付証明書を2件の物件に出したこと自体が、直ちに問題になるわけではありません。

    買付証明書は通常、正式な売買契約書ではなく、
    「この条件なら購入したい」という購入希望を売主側に伝え、
    そこから具体的な交渉を始めるための書面です。

    そのため、今回のように2件とも気に入っていて、どちらも早く決まりそうだったので、
    とりあえず両方に買付を出したということだけで、直ちに二重契約になったり、
    違約金が発生したりするわけではありません。
    実際、不動産取引では買付証明書を出した後に条件がまとまらず、
    正式な契約に至らないこともあります。

    ただ、私は今回の出し方はあまりお勧めしません。

    理由は「法律に違反するから」ではなく、
    買付証明書というものを何のために出すのかを考えると分かりやすいと思います。

    買付証明書は、
    「この物件を買うことを前提に、売主さんとの話を進めてください」
    という意思表示として使われるのが一般的です。

    それを2件に同時に出して、どちらかが先に通ったら片方を断る、という使い方をすると、
    買主側としては保険のつもりでも、売主側からすれば、
    その間ほかの購入希望者との話を止めている可能性があります。

    特に売主さんが「この人が買ってくれる」と考えて、ほかの買主との交渉を断った後で、
    「やっぱりやめます」となれば、売主さんにも実際の機会損失が出ることがあります。

    ですから、「キャンセルできるか」と「出していいか」は別の話なんです。

    正式な売買契約を締結する前であれば、
    一般的な買付証明書を取り下げること自体は珍しいことではありません。
    買付証明書だけで売買契約が成立するわけではない、というのが不動産取引の一般的な扱いです。

    ただし、だからといって「じゃあ、とりあえず何件でも出して、気に入った方だけ買えばいい」と
    いう話にしてしまうのは、私は違うと思います。

    こういうことをみんなが普通にやるようになると、
    売主側も「買付をもらったけれど、本当に買う人なのか分からない」となってしまいます。

    結果として、本当に購入したい人まで含めて買付そのものの信用が下がっていくんですよね。

    不動産は、スーパーで商品を2つカゴに入れて、レジで1つ戻すのとは少し違います。

    売主さんにも、その物件を売る事情がありますし、
    仲介会社も売主・買主双方の調整をしながら契約に向けて動いています。

    今回の相談者様が悪いことをしようとしたわけではなく、
    「早く決まりそうだから、とりあえず出しておこう」という気持ちもよく分かります。

    ただ、私なら、2件とも本当に同じくらい欲しいのであれば、買付を2件出す前に、
    それぞれの不動産会社に
    「実はもう一件、非常に気に入っている物件があります。どちらにするか迷っています」
    と正直に伝えます。

    そのうえで、価格や条件、売主側の状況、契約までのスケジュールなどを聞いて、
    最終的に自分が買いたい方に買付を出します。

    もしすでに2件に出してしまっているのであれば、
    今の段階でどちらか一方に決めるのが一番いいと思います。

    そして、もう一方を取り下げるのであれば、早い方がいいです。

    特に、売主側がまだ買付を承諾していない段階であれば、
    早めに「今回は購入を見送ります」と伝えれば、
    それだけで大きな問題になるケースではありません。

    一方、すでに売主との間で具体的な条件が固まり、契約日まで決まっている、
    手付金を支払っているなど、正式な契約に近いところまで進んでいるのであれば話は別です。
    その段階では、単純な「買付のキャンセル」とは言えなくなってきます。

    ですから、
    今回については「2件に買付を出したからペナルティがある」と心配する必要はありません。

    ただ、私は個人的には、今後はやらない方がいいと思います。

    不動産は、売主も買主も仲介会社も、
    みんなが「この人は本当に買うつもりで話を進めている」と思って動くからこそ、
    交渉が成り立ちます。

    「買付を出しておけば物件を押さえられる」という感覚が強くなってしまうと、
    結局は自分が本当に欲しい物件を見極める前に、
    相手の時間や機会まで使ってしまうことになります。

    今回のように「2件とも本当に欲しい」というところまでは仕方ありません。
    そこから先は、どちらを選ぶのかを決めて、一つに責任を持って買付を出す。

    私はその方が、結果的に気持ちよく不動産を買えると思います。

  • 私が回答します

    小野

    • 30代
    • 神奈川県
    • 男性
    • 不動産会社
    投稿日
    2026/09/19

    ご相談者様

    不動産に従事しております、小野と申します。
    結論から申し上げますとペナルティが課せられる可能性は極めて低くいと考えられます。

    買付証明書につきましては、
    公益社団法人全日本不動産協会にも回答されているように、
    1つの事例として下記におまとめいたします。

    Q:当社所有の土地を売却するため、買受希望者を探したところ、A社から購入の意向が示され、売買代金6,400万円で購入する旨の買付証明書も提出されました。ところが、その後、売買契約書を作成する前に、A社は態度を翻し、購入をしないといってきました。買付証明書の提出をもって、売買契約が成立したという主張ができるでしょうか。

    A:買付証明書の提出だけでは売買契約は成立せず、A社に対して売買契約の成立を主張することはできません。

    一般に、契約成立には、書面は不要であり、特別の方式は必要がありません。口頭であっても申込と承諾が合致すれば契約は成立します。また売買成立について民法は、「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」(第555条)と定めています。そのため売買の対象が特定され、売買代金が決まれば、口約束でも売買契約が成立するようにもみえます。

     しかし不動産は生活に不可欠の重要な財産であり、しかも売買代金は高額ですから、不動産取引は慎重かつ確実に行われなければなりません。そこで通常は、口約束だけではなく、契約書という書面を作成することによって、契約が締結されています。

     裁判所も「相当高額となる土地の売買にあっては、土地所有権の移転と代金の合意のほか、いわゆる過怠約款を定めた上、売買契約書を作成し、手付金もしくは内金を授受するのは、相当定着した慣行であることは顕著な事実である。この慣行は、重視されて然るべきであり、慣行を重視する立場に立てば、土地の売買の場合、契約当事者が慣行に従うものと認められるかぎり、売買契約書を作成し、内金を授受することは、売買の成立要件をなすと考えるのが相当である。」として、契約書の作成による契約締結を、定着した慣行であると判示しています(東京高判昭和50.6.30)。

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