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    投稿日
    2024/08/04

    鈴木洋輔

    鈴木洋輔税理士事務所

    • 40代
    • 埼玉県
    • 男性
    • 専門家

    ご質問ありがとうございます。

    評価額で約8,000万円となると、
    それなりに規模の大きな建物だと推察されます。

    相続税は放っておくと、
    高い税金のまま課税されてしまうので、
    事前に対策を検討することは
    とても有益だと思います。

    これから発生する相続に
    どのように対応していくか…
    ご質問いただいたケースに分けてお答えします。


    ■ ①マンションをそのまま相続し、賃貸として運用する
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    一番リスクの少ない方法だと考えられます。

    築30年という状況ですので、
    まだローンは残っているか気になります。

    RC等でローンが残っていれば、
    相続税的にも多少の節税効果はあります。

    鉄骨造等でローンがあまり残っていなければ、
    相続税の節税効果が乏しいため
    さらなる対策が必要になると考えられます。


    収支の面では、
    大規模修繕等は大きな負担になる一方で、
    借入残高が少ないなら
    利息の負担も小さいと考えられます。

    駅距離や競争力などを見ないと、
    詳しくわからないのが正直な所ですが、
    キャッシュ的に悪くなく、
    まだまだ使える物件なら
    継続して賃貸して良いように感じられます。


    ■ ②マンションを売却し、より新しい物件に買い替える
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    短期間で合理的な対策になる可能性があります。

    もし、現在のマンションが駅距離や競争力に
    弱いのであれば買換えも
    ひとつの選択肢になるかと思います。

    売却した資金を原資に買換えると思いますが、
    同程度の総額で買換えた場合には、
    あまり相続税の節税効果は見込めません。

    追加で借入を増やし、規模を大きくすれば、
    資産圧縮効果が生まれ、
    相続税が減ることも期待できます。


    近年は投資物件の利回りが低下しており、
    収益力の面で劇的な増収は
    見込めないと考えられます。
    ただ、日本人は新築物件が好きなので、
    安定した賃貸経営という意味では
    築年数が浅い物件に買換えるのは
    悪くないと思います。


    なお、この選択肢にはリスクもあります。
    それは、売却と購入の隙間期間に
    相続が発生してしまうことです。

    この場合、手元にキャッシュがあり、
    不動産が無い状況になります。

    不動産評価による資産圧縮が使えない事に加え
    貸家建付地の減価や、
    小規模宅地等の特例も使えません。

    売却と購入の隙間期間を短くすることで、
    リスクを軽減できますが、
    万が一のリスクがあることをご認識下さい。


    ■ ③マンションを取り壊し、土地を活用して新たに建物を建てる
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    最も相続税の節税効果があると思います。
    しかし、現実的な難しさもある方法です。

    建物を取り壊して再建築するとなると、
    コストが大きくかかりますので、
    その分相続税の圧縮効果も大きくなります。


    一方で、入居者の退居や
    取り壊しに期間を要するため、
    相続が発生するまでに
    対策が完了しないリスクもあります。

    ご質問者様が55歳ということは、
    ご両親は80代・90代でしょうか。
    ご健康状態も気になります。

    仮に退居の途中で相続が発生した場合、
    退居勧告により入居者が減っているので、
    貸家建付地の減価は弱くなります。

    もし、取り壊し後の再建築が完了していない場合には、
    小規模宅地等の特例も適用できません。
    加えて、建物も固定資産税評価ではなく、
    工事の進捗に合わせた投下資金で計算をします。

    細かい計算は色々ありますが、
    結果的に、相続税が大きくなるリスクがあります。


    また、資材や人件費が高騰しているので、
    利回りの向上はあまり期待できません。
    でも、「いつか再建築する…」のであれば、
    相続が発生する前に着手するのも
    ひとつの選択肢かと思います。


    ----------

    相続対策は全体的な財産と債務を把握しつつ、
    ご年齢や親族関係を見ながら、
    総合的な検討が必要になると思います。

    具体的な行動を伴う②、③の案は、
    実行するのに期間を要してしまいます。

    私も相続対策をサポートする中で、
    「建築が間に合わなかった…」
    というケースに出会うことはよくあります。

    動くのであれば
    早めに検討を進めることがオススメです。


    賃貸経営をしているのであれば、
    顧問税理士さんも付いているともいます。
    まずは、相続の対策について、
    顧問の税理士さんにアドバイスを求めるのが
    よろしいかと思います。



    ご参考になれば幸いです。

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